公認心理師資格試験 過去問解説 問79 公認心理師による対応
- 2021.08.13
- 公認心理師(第3回) 資格試験
- 保健医療領域, 第3回公認心理師試験
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第3回公認心理師試験(令和2年12月20日実施)|一般社団法人日本心理研修センター
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【問79】公認心理師による対応
問79 精神科領域における公認心理師の活動について、適切なものを1つ選べ。
① 統合失調症患者に対するソーシャルスキルトレーニングSSTは、個別指導が最も効果的とされる
② 神経性やせ症/神経性無食欲症の患者が身体の話題を嫌う場合、身体症状に触れずに心理療法を行う
③ 精神疾患への心理教育は、家族を治療支援者とするためのものであり、当事者には実施しない場合が多い
④ 境界性パーソナリティ障害の治療では、患者への支援だけではなく、必要に応じてスタッフへの支援も行う
⑤ 妊産婦に精神医学的問題がある場合、産科医が病状を把握していれば、助産師と情報を共有する必要はない
④ 境界性パーソナリティ障害の治療では、患者への支援だけではなく、必要に応じてスタッフへの支援も行う
となります。
境界性パーソナリティ障害 Borderline Personality Disorder は、不安定な対人関係と自己像、感情の調節困難や衝動的な行為が特徴的な精神疾患です。
以下が代表的な特徴です。
- 見捨てられること(実際のものまたは想像上のもの)を避けるため必死で努力する
- 不安定で激しい人間関係をもち、相手の理想化と低評価との間を揺れ動く
- 不安定な自己像または自己感覚
- 自らに害を及ぼしうる2領域以上での衝動性(例、安全ではない性行為、過食、向こう見ずな運転)
- 反復的な自殺行動、自殺演技、もしくは自殺の脅しまたは自傷行為
- 気分の急激な変化(通常は数時間しか続かず、数日以上続くことはまれ)
- 持続的な空虚感
- 不適切な強い怒りまたは怒りのコントロールに関する問題
- ストレスにより引き起こされる一時的な妄想性思考または重度の解離症状
境界性パーソナリティ障害の治療では、薬物療法とともに精神療法(心理療法)が主体で行われます。
一方で、「見捨てられ不安に基づく行動」や「理想化とこきおろし(低評価)」などの対人面での特徴や「自殺企図・自傷行為」などの衝動的行動、「感情の調節困難(特に怒り)」などの症状によって、安定した治療関係を結ぶことが難しく、支援者側が疲弊することが多いです。
疲弊した際に起こる反応として代表的なもののなかにバーンアウトがありますね。
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そのため、クライエントとスタッフお互いを守るためにも、しっかりとした面接の枠組みや治療契約などを常に話し合っていく必要があります。
加えて、転移や逆転移も生じやすいため、担当するスタッフ間での情報の共有や必要に応じて支援を行うことが重要になってくるでしょう。
よって、選択肢④「境界性パーソナリティ障害の治療では、患者への支援だけではなく、必要に応じてスタッフへの支援も行う」が正しい記述になります。
選択肢の解説
① 統合失調症患者に対するソーシャルスキルトレーニングSSTは、個別指導が最も効果的とされる
ソーシャルスキルトレーニング Social Skills Training:SSTは、日本語で「生活技能訓練」と訳される技法です。
社会的な場面において自分が期待するような反応を他者から得るためには、ある程度の水準の考え方や行動のスキルが必要となります。
SSTでは、「モデリング」や「ロールプレイ」といった技法を通じて、社会的な場面で必要な考え方や行動のスキルを獲得していくことになります。
SSTは認知行動療法の流れを汲んでおり、
- クライエントの考え・解釈・認知を改善すること
- 実際の行動が変わること
が大きな目標となります。
さて、このSSTですが、もともとは精神科の入院患者を対象として行われ始め、効果が示されてきました。
保険診療の観点では、「入院生活技能訓練療法」として保険点数化されており、1度の参加人数は15人までとされています。
個別のSSTももちろんありますが、基本的には集団で行われることが多く、また集団では参加者同士で肯定的なフィードバックをかけあうことが可能であり、SSTの効果を高めることが期待されます。
よって、選択肢①「統合失調症患者に対するソーシャルスキルトレーニングSSTは、個別指導が最も効果的とされる」は正しい記述とはいえず、問題の解答として不適切となります。
② 神経性やせ症/神経性無食欲症の患者が身体の話題を嫌う場合、身体症状に触れずに心理療法を行う
神経性やせ症の中核症状は、「やせ願望・肥満恐怖」「ボディイメージの歪み」といった自分の身体に関連する認知の歪みとなります。
そのため、心理療法では身体に関連する認知を扱う場合も多くあります。
また、身体症状は低体重に起因する場合が非常に多いのですが、身体症状を回復させることがクライエントの動機づけとなることもあります。
もちろん、タイミングはあるでしょうが全く扱うことなく神経性やせ症に対する心理療法を行うことは難しいでしょう。
よって、選択肢②「神経性やせ症/神経性無食欲症の患者が身体の話題を嫌う場合、身体症状に触れずに心理療法を行う」は不適切な記述といえますね。
③ 精神疾患への心理教育は、家族を治療支援者とするためのものであり、当事者には実施しない場合が多い
心理教育とは、精神疾患を抱える当事者本人や家族含めた関係者の方に対して、当該疾患の症状や経過などの情報を提供して理解を促すことで、最善の対応を取ることが可能なように促す技法です。
家族の理解を得ることも重要ですが、当事者自身も自分の症状を理解して、症状を悪化させずにより良い生活をしていくための行動が取れることが重要ですね。
以上のことから、選択肢③「精神疾患への心理教育は、家族を治療支援者とするためのものであり、当事者には実施しない場合が多い」は不適切な記述といえます。
⑤ 妊産婦に精神医学的問題がある場合、産科医が病状を把握していれば、助産師と情報を共有する必要はない
妊産婦・周産期のメンタルヘルスケアの重要性は広く知られるようになってきています。
周産期の医療チームのなかには、産婦人科医・助産師・保健師のみではなく、精神科医・精神保健福祉士・公認心理師などが含まれるようになりました。
チーム医療の原則としては、専門家間の情報共有と連携は必須となります。
主科は産婦人科の場合が多いでしょうが、精神疾患の専門家である精神科医、心理の専門家である公認心理師は、産婦人科医のみならず、身近で支援を行う助産師にも情報提供をすることは円滑な支援のために必要事項でしょう。
以上のことから、選択肢⑤「妊産婦に精神医学的問題がある場合、産科医が病状を把握していれば、助産師と情報を共有する必要はない」は不適切な記述といえますね。
まとめ
第3回公認心理師資格試験の問79は、公認心理師による対応に関する問題でした❗️
キーワード・境界性人格障害
・SST
・心理教育
・神経性やせ症
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