公認心理師資格試験 過去問解説 問70 事例問題:高血圧症と認知症
- 2021.07.23
- 公認心理師(第3回) 資格試験
- 保健医療領域, 第3回公認心理師試験, 認知症
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第3回公認心理師試験(令和2年12月20日実施)|一般社団法人日本心理研修センター
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【問70】事例問題:高血圧症と認知症
問70 72 歳の男性 A。A は、高血圧症で通院している病院の担当医に物忘れが心配であると相談した。担当医の依頼で公認心理師 B が対応した。A は、1年前より徐々に言いたいことがうまく言葉に出せず、物の名前が出てこなくなった。しかし、日常生活に問題はなく、趣味の家庭菜園を楽しみ、町内会長の役割をこなしている。面接時、軽度の語健忘はみられるが、MMSE は 27 点であった。2か月前の脳ドックで、頭部 MRI 検査を受け、軽度の脳萎縮を指摘されたという。
B の A への助言として、不適切なものを1つ選べ。① 高血圧症の治療を続けてください。
② 栄養バランスのとれた食事を心がけてください。
③ 運動習慣をつけて毎日体を動かすようにしてください。
④ 生活習慣病の早期発見のために定期的に健診を受けてください。
⑤ 認知症の予防に有効なお薬の処方について、医師に相談してください。
⑤ 認知症の予防に有効なお薬の処方について、医師に相談してください
となります。
高血圧症と認知症の関連
認知症には図で示すようにいくつか種類がありました。
高血圧が脳血管障害を介して血管性認知症の原因となることは論を待たない。最近では、高血圧がアルツハイマー型認知症の発症にも関与することも数多くの疫学研究で報告されている。
このように中年期の「高血圧」は認知症のなかでも「脳血管性認知症」と「アルツハイマー型認知症」の重大なリスク因子となることが研究の結果で示されています。
特に、軽度の認知機能低下が見られている場合に最も高血圧が見られていて、認知症の症状が進行している場合はむしろ血圧が低いようです。
認知症と高血圧の関連性は報告によって差があるようですが、以下の2点は押さえておくべきでしょう。
- 中年期の高血圧は認知症の発症と関連している
- 血圧の変動が認知症の発症と関連している
高血圧治療ガイドライン(2019)によれば、脳血管障害の既往歴がない患者に対して降圧薬による治療が行われることで認知機能が改善することが無作為化比較試験で示されているようです。
公認心理師資格試験 過去問解説 問22 Alzheimer型認知症について
選択肢の解説
事例Aに関しては、72歳という高齢に加えて、軽度の認知機能の低下が認められていますが、認知症の水準までには認知機能の低下が認められていないことがわかります。
① 高血圧症の治療を続けてください
Aは現時点の評価では、「高血圧」と軽度の認知機能低下が見られている状態といえます。
高血圧の治療を行うことで認知機能の低下が抑制されるという明確な根拠は示されていませんが、悪影響を与えるという明確な根拠も示されていません。
そのため、高血圧の治療が優先されます。
よって、選択肢①「高血圧症の治療を続けてください」は適切な記述といえるため、問題の解答としては不適切となります。
② 栄養バランスのとれた食事を心がけてください
高血圧症の対策のひとつとして、生活習慣の改善があります。
健康日本21にも栄養・食生活の改善として以下の項目が挙げられています。
- 食塩摂取量の減少
- 野菜・果物摂取量の増加
- 肥満者の減少
よって、選択肢②「栄養バランスのとれた食事を心がけてください」は適切な記述といえるため、問題の解答としては不適切となります。
③ 運動習慣をつけて毎日体を動かすようにしてください
こちらの選択肢も生活習慣の改善のひとつです。
身体活動・運動として以下の項目が挙げられています。
- 歩数の増加
- 運動習慣者の割合の増加
よって、選択肢③「運動習慣をつけて毎日体を動かすようにしてください」は適切な記述といえるため、問題の解答としては不適切となります。
④ 生活習慣病の早期発見のために定期的に健診を受けてください
生活習慣病とは、過去には「成人病」と呼ばれていた
食事や運動・喫煙・飲酒・ストレスなどの生活習慣が深く関与し、発症の原因となる疾患の総称
出典:生活習慣病|e-ヘルスネット(厚生労働省)
を指します。
「高血圧症」や「糖尿病」なども生活習慣病のひとつですね。
公認心理師資格試験 過去問解説 問29 人体の構造と機能及び疾病「糖尿病」
そのため、選択肢④「生活習慣病の早期発見のために定期的に健診を受けてください」は適切な記述といえるため、問題の解答としては不適切となります。
⑤ 認知症の予防に有効なお薬の処方について、医師に相談してください
Aは軽度の認知機能低下が認められており、生活の側面から認知症の予防をしていくことは重要な観点です。
一方で、現時点ではMMSE=27点とカットオフ値以下であり、72歳という年齢や日常生活に支障を来たしていないことを考えると、認知症の疑いは否定的と考えられます。
また、認知症の予防に有効な薬物療法は確立されていませんので、「予防に有効なお薬の処方」という文言も不適切でしょう。
よって、選択肢⑤「認知症の予防に有効なお薬の処方について、医師に相談してください」は不適切な記述といえます。
まとめ
第3回公認心理師資格試験の問70は、事例問題:高血圧症と認知症に関する問題でした❗️
高血圧と認知症の関連性については以下のポイントを押さえておく必要があります。
- 中年期の高血圧は認知症の発症と関連している
- 血圧の変動が認知症の発症と関連している
また、「高血圧症」「糖尿病」と同じく、生活習慣病ですので、生活習慣病の予防をしていくことも重要な観点ですね。
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