公認心理師資格試験 過去問解説 問31 精神疾患とその治療「有害事象、副作用」

公認心理師資格試験 過去問解説 問31 精神疾患とその治療「有害事象、副作用」

第3回公認心理師試験の過去問や正答は以下のサイトで入手可能です。

第3回公認心理師試験(令和2年12月20日実施)|一般社団法人日本心理研修センター

 

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【問31】精神疾患とその治療「有害事象、副作用」。

問31 抗精神病薬を長期間投与された患者に多くみられる副作用のうち、舌を突出させたり、口をもぐもぐと動かしたりする動きが特徴的な不随意運動として、正しいものを1つ選べ。

① バリズム

② アカシジア

③ ジストニア

④ ジスキネジア

⑤ ミオクローヌス

出典:第3回公認心理師試験(令和2年12月20日実施)|一般社団法人日本心理研修センター

 

正答は ④

 

④ ジスキネジア

となります。

 

問31は抗精神病薬の副作用である錐体外路症状について理解していれば簡単に回答可能な問題となっています❗️

 

ジスキネジア

ジスキネジアとは、自分では止めらない・または止めてもすぐに出現するおかしな動きをまとめた呼び名です。他の人から見ると、自分で勝手に動いているのか、止められないで困っているのか分からないような動きです。
(中略)
しばしば見られる症状としては、繰り返し唇をすぼめる・舌を左右に動かす・口をもぐもぐさせる・口を突き出す・歯を食いしばる・目を閉じるとなかなか開かずしわを寄せている・勝手に手が動いてしまう・足が動いてしまって歩きにくい・手に力が入って抜けない・足が突っ張って歩きにくい等です。
出典:重篤副作用疾患別マニュアル ジスキネジア|厚生労働省(平成21年5月)

ジスキネジア(Dyskinesia)とは、自分の意志とは関係なく身体が動いてしまう症状(不随意運動)のことを指しています。

 

抗精神病薬やパーキンソン病薬の副作用として出現することが多い錐体外路症状のひとつとされています。

 

抗精神病薬を長い期間使用している患者さんがジスキネジアの症状が出る場合を遅発性ジスキネジア(Tardive dyskinesiaといいます。

 

ジスキネジアはもともとは「唇をすぼめる」「口を突き出す」などの口唇ジスキネジア(oro-buccal-lingual dyskinesia) を意味していましたが、現在では特定の運動のみでなく多様な症状(不随意運動)が混在している状態と考えられています。

 

ジスキネジアの症状

  • 繰り返し唇をすぼめる
  • 舌を左右に動かす
  • 口をもぐもぐさせる
  • 口を突き出す
  • 歯を食いしばる
  • 勝手に手が動いてしまう

 



 

残りの選択肢の解説

バリズム

近位筋優位な運動で、大きな速い動きを示し、手や足を放り出す様な動きである。

出典:重篤副作用疾患別マニュアル ジスキネジア|厚生労働省(平成21年5月)

バリズム(ballism)は、両腕と両脚を放り出すような大きく早い動きのことをさします。

 

例えて言えば、下肢では蹴り挙げるような動作、上肢ではボールを投げつけるような動作に似ている。

出典:加藤丈夫(2000). 特集 不随意運動:診断と治療の進歩, 日内会誌, 89, 650-654.

 

片側の腕と脚に症状が出ることが多く、この場合をヘミバリズム(hemiballism)、片側の腕か脚のどちらかに症状が出る場合をモノバリズム(monoballism)、両脚のみに症状が認められる場合をパラバリズム(paraballism)、両方の腕と脚どちらにも症状が出る場合を両側性バリズム(bilateral ballism)と呼びます。

 

バリズムでは脳内のドーパミン系のニューロンが亢進している状態と考えられています。

 

アカシジア

アカシジアは静座不能症と訳されていて、座ったままでじっとしていられず、そわそわと動き回るという特徴があります。

出典:重篤副作用疾患別対応マニュアル アカシジア|厚生労働省(平成22年3月)

アカシジア(akathisia)は、「静かに座っていることが難しい」とされるように、落ち着きがなくなったり、動き回ったりすることをいいます。

 

不安や焦燥感などの「気持ち面でのそわそわ」というより、「身体のそわそわ」を感じるというのが特徴的で、脚のムズムズ感が生じることもあります。

 

症状は歩行や運動によって緩和することが多いですが、夜間帯の入眠困難などを伴うことがあります。

 

ジストニア

ジストニアは、長時間続く(持続性の)不随意な筋収縮を特徴とし、患者は異常な姿勢を強いられます。例えば、体全体、体幹、四肢、または首がねじれたりします。

出典:ジストニア – 09. 脳、脊髄、末梢神経の病気 -MSDマニュアル家庭版

ジストニア(dystonia)は、抗精神病薬の副作用や遺伝性の疾患などで生じることの多く、意図しない筋肉の収縮により運動や姿勢の異常が出ることが特徴的な症状です。

 

たとえば以下のような症状があります。

  • まぶたが閉じる
  • 首・背中・腕・足などがねじれる
  • 書痙(書字の際に腕が固まる)

 

大脳基底核、視床、小脳、大脳皮質などの脳の複数の領域の活動が過剰になるため生じると考えられています。

 

ミオクローヌス

ミオクローヌスは、筋肉や筋肉群に起こる素早い稲妻のような収縮を指します。

出典:ミオクローヌス – 09. 脳、脊髄、末梢神経の病気 – MSDマニュアル家庭版

ミオクローヌス(myoclonus)は、中枢神経系の異常によって、両腕・脚、顔、体幹などに生じる無意識の運動(不随意運動)です。

 

眠っている最中に身体の一部がビクッと動くことがありますが、それも正常なミオクローヌスのひとつとされています。

 

非定型抗精神病薬、三環系・四環系の抗うつ薬などで生じることがあります。

 



 

まとめ

第3回公認心理師資格試験の問31は、精神疾患とその治療「有害事象、副作用」に関する問題でした。

 

この問題で挙げた副作用以外にも、抗精神病薬で生じることのある副作用はおさえておきましょう❗️

  • ジスキネジア、遅発性ジスキネジア
  • ジストニア
  • アカシジア
  • 薬剤性パーキンソニズム(安静時振戦、姿勢保持振戦)
  • 舞踏病
  • ミオクローヌス
  • チック
  • バリズム

副作用に関して、以下の文献が参考になります。