公認心理師資格試験 過去問解説 問29 人体の構造と機能及び疾病「糖尿病」
- 2021.04.29
- 公認心理師(第3回) 資格試験
- 保健医療領域, 第3回公認心理師試験
第3回公認心理師試験の過去問や正答は以下のサイトで入手可能です。
第3回公認心理師試験(令和2年12月20日実施)|一般社団法人日本心理研修センター
公認心理師資格試験の過去問をしっかりと振り返ることで「自分に必要な知識は何か」を知るための手がかりとしてくださいね!
【公認心理資格試験】試験勉強の仕方。ブループリントに記載されている出題割合で勉強の範囲を狭めない方がいい理由について解説します!
【問29】人体の構造と機能及び疾病「糖尿病」
問29 糖尿病について、正しいものを1つ選べ。
① 糖尿病は、1型から2型に移行することが多い。
② 糖尿病の運動療法には、無酸素運動が有効である。
③ 2型糖尿病患者に、血糖測定〈SMBG〉は不必要である。
④ 非定型抗精神病薬の中には、糖尿病患者に使用禁忌の薬がある。
⑤ 健診でHbA1c値が6.8%であった場合は、糖尿病の可能性は低い。
④ 非定型抗精神病薬の中には、糖尿病患者に使用禁忌の薬がある
となります。
糖尿病
糖尿病とは、インスリンの作用が十分でないためブドウ糖が有効に使われずに、血糖値が高くなっている状態のことです。
厚生労働省のe-ヘルスネットの解説がわかりやすいため、参照していきましょう。
食事によって腸から吸収されたブドウ糖は、血液の中に入ります。すると、すぐにすい臓(膵臓)からインスリンというホルモンが分泌されます。インスリンは、ブドウ糖が体中のいろいろな細胞に入るための「入場券」のような役割をもっており、インスリンがないとブドウ糖は細胞に入ることができません。インスリンにより、血液中のブドウ糖は速やかに細胞内に入り、エネルギー源として、筋肉を動かしたり、脳を働かせたりするのに利用されます。
つまり糖尿病とは、インスリンがうまく作用せずに、血液中のブドウ糖濃度(血糖値)が高くなることで、身体にさまざまな影響を及ぼす病気であるといえます。
血糖値が高くなることによって、動脈硬化・脳卒中・心筋梗塞のリスクが高まるほか、代表的な合併症として、以下の3つがあり、腎症が出現すると透析が必要となることもあります。
3大合併症
- 糖尿病性神経性障害:手足のしびれ・痛み・ほてり、足の感覚の麻痺
- 糖尿病性網膜症:目のかすみ、視力低下、失明
- 糖尿病性腎症:血圧が上昇、身体のむくみ、進行すると腎不全や尿毒症
糖尿病には以下の類型があります。
- 1型糖尿病:インスリンを産出する膵臓のβ細胞が何らかの理由で破壊されてしまうことで発症します。生活習慣とは無関係の自己免疫性疾患とされています。
- 2型糖尿病:不摂生な食生活、運動不足、肥満、ストレスなど生活習慣や加齢などの要因が重なることで発症します。遺伝的に発症しやすい人もいて、糖尿病全体の約90%を占めるとされています。
- その他
- 妊娠糖尿病:妊娠中に発症した糖代謝異常のことをさします。
糖尿病の治療としては、血糖値・体重などをコントロールして合併症の発症や症状の悪化を予防することを目的として、食事療法・運動療法・薬物療法が主として行われます。
選択肢の解説
糖尿病は2型から1型へ移行することがある
① 糖尿病は、1型から2型に移行することが多い。
糖尿病の類型に関しては、先ほど説明しました。
1型糖尿病は「何らかの理由でインスリンを産出する膵臓のβ細胞が破壊される自己免疫性疾患」、2型糖尿病は「不摂生な食生活、運動不足、肥満、ストレスなど生活習慣や加齢などの要因が重なる生活習慣病」というように発症する原因が異なります。
1型糖尿病と2型糖尿病は移行していくのか❓という疑問について見ていきましょう。
1型糖尿病のなかに、はじめは2型糖尿病のような状態で始まるため食事療法や運動療法で血糖のコントロールがうまくいきますが、徐々に1型糖尿病の状態になっていく「緩徐進行1型糖尿病」というタイプがあります。
また、2型糖尿病の経過のなかで1型糖尿病に移行していく症例の報告もいくつかあるようです。
2型糖尿病の経過において、インスリン治療の開始後に1型糖尿病を発症した報告が散見される。
出典:呉他(2009). 2 型糖尿病の経過中, 1 型糖尿病に移行したと考えられる 1 症例. 糖尿病, 52(10), 859-864.
選択肢①「糖尿病は、1型から2型に移行することが多い」は、「2型から1型」の場合は適切といえますが、1型から2型の報告は調べた限りでは認められず、不適切な回答といえます。
糖尿病の運動療法では有酸素運動が推奨される
② 糖尿病の運動療法には、無酸素運動が有効である。
糖尿病の運動療法では、中程度の強度の有酸素運動が推奨されています。
中程度の強度の有酸素運動とは、大体160kcalから240kcalのエネルギー消費がある運動とされています。
運動療法では、上記の有酸素運動を理想的には毎日、少なくとも週に3日以上は行うことが求められます。
そのため、選択肢②「糖尿病の運動療法には、無酸素運動が有効である」は、正しくは「有酸素運動」であり、選択肢としては不適切となります。
血糖測定(SMBG)
③ 2型糖尿病患者に、血糖測定〈SMBG〉は不必要である。
SMBGとは、self measurement of blood glucoseの略で、「自分で血糖値を測定する」という意味で、簡易血糖測定機器を使用して、診察以外の日常生活の中で血糖値を測定することをさします。
血糖測定〈SMBG〉は、インスリンなどの薬物療法を受けている1型糖尿病・2型糖尿病患者さんに対して保険適用となっています。
また、インスリンを使用していない2型糖尿病患者さんに対しても、血糖のコントロールに関する効果が示されています。
以上のことから、選択肢③「2型糖尿病患者に、血糖測定〈SMBG〉は不必要である」は不適切といえます。
抗精神病薬と糖尿病
④ 非定型抗精神病薬の中には、糖尿病患者に使用禁忌の薬がある。
非定型抗精神病薬、特に第二世代抗精神病薬(SGA)やMARTAの代表的な副作用のなかには、体重増加・脂質異常・糖尿病などが含まれています。
糖尿病患者に使用禁忌
- オランザピン
- クエチアピン
慎重に投与する
- リスペリドン
- ペロスピロン
- アリピプラゾール
以上のことから、選択肢④「非定型抗精神病薬の中には、糖尿病患者に使用禁忌の薬がある」は正しいといえます。
糖尿病に関連する検査項目
⑤ 健診でHbA1c値が6.8%であった場合は、糖尿病の可能性は低い。
糖尿病に関連する血液検査の項目としては以下のものがあります。
- HbA1c
- 早朝空腹時血糖
- 75gOGTT(75g経口ブドウ糖負荷試験)
- 随時血糖値
それぞれの詳細についての解説はここではしませんが、過去1〜2ヶ月の血糖を反映する数値であるHbA1cの正常な範囲は4.3%から5.8%であり、6.5%以上となると糖尿病の可能性が高いとされます。
詳しくはこちらの健康診断-結果でわかる糖尿病リスクが参考になります。
そのため、選択肢⑤「健診でHbA1c値が6.8%であった場合は、糖尿病の可能性は低い」は、6.5%以上だと糖尿病の可能性が高いとされるため、不適切といえます。
まとめ
第3回公認心理師資格試験の問29は、人体の構造と機能及び疾病「糖尿病」に関する問題でした。
領域的には健康・医療に関する心理学と重複する部分が多く、特に2型糖尿病の生活習慣のコントロールに対して心理療法やカウンセリングが行われることもあります。
公認心理師資格試験 過去問解説 問18 健康・医療に関する心理学「心身症」
疾患の細かい部分は省いても、基礎的な部分の知識はしっかりと押さえておきましょう。
-
前の記事
公認心理師資格試験 過去問解説 問28 産業・組織に関する心理学「F. Herzbergの2要因理論」 2021.04.28
-
次の記事
公認心理師資格試験 過去問解説 問30 人体の構造と機能及び疾病「甲状腺機能低下症」 2021.04.30
コメントを書く