公認心理師資格試験 過去問解説 問28 産業・組織に関する心理学「F. Herzbergの2要因理論」
- 2021.04.28
- 公認心理師(第3回) 心理学 資格試験
- 産業・組織, 第3回公認心理師試験
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【問28】産業・組織に関する心理学「F. Herzbergの2要因理論」
問28 F. Herzbergの2要因理論に関する説明として、正しいものを1つ選べ。
① 達成動機は、接近傾向と回避傾向から構成される。
② 職場の出来事で満足を与える要因を達成要求という。
③ 分配の公正と手続きの公正は、仕事への動機づけを高める。
④ 職場での満足を感じる要因は、仕事への動機づけを高める。
⑤ 職場の出来事で不満足につながる要因をバーンアウトという。
④ 職場での満足を感じる要因は、仕事への動機づけを高める
となります。
F. Herzbergの2要因理論
Herzberg(ハーズバーク)の2要因理論(two factor theory)とは、産業心理学領域の動機づけに関する理論で、「組織に属する個人の職務への満足感と不満感に関係する要因」を説明するものです。
2要因理論では、満足感を引き起こす要因のことを「動機づけ要因(motivators)」、不満足感を引き起こす要因のことを「衛生要因(hygiene factors)」と呼ばれます。
ハーズバーグは仕事への満足感を調査することで、以下の「動機づけ要因」と「衛生要因」を見出しました。
動機づけ要因
- 達成
- 承認
- 仕事そのもの
- 責任
- 昇進
- 成長
衛生要因
- 会社の政策と経営
- 監督
- 給与
- 対人関係
- 作業条件
ハーズバーグは「動機づけ要因」を自己実現や成長の欲求、「衛生要因」を不快さを回避する欲求として整理しており、それぞれ「仕事への動機づけを高める/低める」と考えています。
ハーズバーグの2要因理論の重要なポイントは、「動機づけ要因が豊かであると満足感は高まるが、不満足感にはつながらない」「衛生要因を解消することは不満足感を減らすが、満足感を高めることにはつながらない」というように、同じ一直線上の両側にあるのではなく、別々の軸を想定したことです。
以上のことから選択肢④「 職場での満足を感じる要因は、仕事への動機づけを高める」は、「職場での満足を感じる要因=動機づけ要因」をさし、「動機づけ要因」は仕事への動機づけを高めるため、正しい選択肢といえます。
② 職場の出来事で満足を与える要因を達成要求という。
選択肢②「 職場の出来事で満足を与える要因」は「動機づけ要因」であるため、こちらの選択肢は不適切となります。
【参考文献】
石田恒夫(1977).動機づけに関する一考察:ハーズバーグ理論を中心として, 広島経済大学創立十周年記念論文集, 173-192.
森永・佐藤・金井(2008). 仕事意欲の2要因理論に関する発見的追試 : 臨界事象法に注目して, 国民経済雑誌, 198(3), 1-19.
北垣武文(2012). ハーズバーグの研究方法に関する一考察 : 実効性の高いやる気のマネジメントの実現に向けて, オイコノミカ, 48(2), 43-59.
選択肢の解説
達成動機(achievement motivation)
① 達成動機は、接近傾向と回避傾向から構成される。
こちらの選択肢は「達成動機」に関するものとなります。
達成動機とは
ある優れた目標を立て、それを高い水準で完遂しようとする動機づけ
出典:心理学辞典|有斐閣
を意味します。
つまり「課題を目の前にしたときに高いレベルの目標を立てて達成しよういう動機づけ(=目標に向かって行動を維持したり調整すること)」といえます。
Atkinson(アトキンソン)は、達成動機は「達成欲求」と「失敗回避欲求」の2つからなり、達成動機に基づく行動は、達成目標への接近傾向(達成欲求×成功の確率×成功の誘因価:成功したときの報酬)と失敗回避傾向(失敗回避欲求×失敗の確率×失敗の負の誘因価:失敗したときの不快感)によって決められるとしています。
選択肢①「達成動機は、接近傾向と回避傾向から構成される」はハーズバーグの2要因理論を説明したものではないため、問題の回答として不適切となります。
組織的公正(organizational justice)
③ 分配の公正と手続きの公正は、仕事への動機づけを高める。
組織的公正とは「企業組織における公正性」をさす概念で、新しい職業性のストレスとして2000年以降に研究が発展していきました。
組織的公正の元となるのは、Adams(アダムス)の提唱した「衡平理論(equity theory)」という理論とされています。
衡平理論とは、「人は他者と比較して自分の投入(努力)と成果(報酬)の比率が相手のそれと等しいときに公平であると考える」という理論である。この理論は「組織における意思決定(評価や処遇)の結果に関する公正性」を表すことから、後に分配的公正(distributive justice)と呼ばれるようになり、組織的公正を構成する重要な要素の1つとなっている。
つまり分配的公正(distributive justice)とは、「個人の労力・時間・能力などに応じて成果を分配することが公正である」という概念で、個人の評価や処遇などの組織の意思決定の結果が公平であることを示すことにつながると考えられています。
一方、分配的公正のみでは、組織的公正を説明することが難しいため、組織による意思決定のプロセスにも注目が集まるようになり、手続き的公正(procedual justice)という概念も提唱されるようになりました。
細かい部分は省きますが、現在では「分配的公正」「手続き的公正」に加えて、部下に対する上司の態度を示す「相互作用的公正/対人的公正」も組織的公正の重要な構成要素と考えられています。
組織的公正 = 「分配的公正」「手続き的公正」「相互作用的公正/対人的公正」
選択肢に戻りますが、選択肢③「分配の公正と手続きの公正は、仕事への動機づけを高める」は、「分配の公正」と「手続きの公正」は「組織的公正」を高めるため、ハーグバーグの2要因理論に沿って考えると不満足感の要因である「衛生要因」を低める=不満足感を緩和する効果はあるかもしれませんが、「動機づけ要因」には該当しないため仕事への動機づけを高めるとはいえず不適切となります。
バーンアウト(burnout)
⑤ 職場の出来事で不満足につながる要因をバーンアウトという。
バーンアウトとは、英語で「燃え尽きる」の意味をもつ言葉で、Freudenberger(フロイデンバーガー)によって提唱された概念です。
彼は、保健施設に勤務していた間、 数多くの同僚が精神的、身体的異常を訴えるのを目撃した。 同僚たちは、1 年余りの間に、 徐々に、あたかもエネルギーが失われていくかのように、 仕事に対する意欲や関心を失っていったのである。
Maslach(マスラック)らが開発したMBI(Maslach Burnout Inventory)によると、
- 情緒的消耗感(emotional exhaustion):心身ともに疲れ果てた感覚
- 脱人格化(depersonalization):人を人と思わなくなる気持ち
- 個人的達成感の低下(personal accomplishment):仕事へのやりがいの低下
の3つの症状があるとされています。
この症状の中でも「情緒的消耗感」こそがバーンアウトの中核的な症状とされています。
バーンアウトは心身症のひとつともされており、対人援助職など人と関わる業務に就く方に多いことがわかっています。
選択肢に戻りますが、選択肢⑤「職場の出来事で不満足につながる要因」はバーンアウトではなく衛生要因であるため、回答としては不適切となりますね。
まとめ
第3回公認心理師資格試験の問28は、産業・組織に関する心理学「F. Herzbergの2要因理論」に関する問題でした。
以下のキーワードを説明できるようにしておきましょう❗️
この記事のまとめ・F. Herzbergの2要因理論:「動機づけ要因(仕事への満足)」と「衛生要因(仕事への不満)」
・達成動機=「達成欲求」と「失敗回避欲求」
・組織的公正=「分配的公正」「手続き的公正」「相互作用的公正/対人的公正」
・バーンアウト:「情緒的消耗感」「脱人格化」「個人的達成感の低下」
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