公認心理師資格試験 過去問解説 問21 認知症当事者へのパーソンセンタード・ケア
- 2021.04.09
- 公認心理師(第3回) 資格試験
- 第3回公認心理師試験, 認知症
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第3回公認心理師試験(令和2年12月20日実施)|一般社団法人日本心理研修センター
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問21 T.Kitwoodの提唱した認知症に関するパーソンセンタード・ケアの考え方について、最も適切なものを1つ選べ。
① 問題行動を示したときは、効率的に管理しなければならない。
② ケアで重要なことは、介護者自身の不安や弱さなどは考慮せず、理性的に行うことである。
③ 認知症の治療薬が開発されるまで、専門家として認知症の人にできることはほとんどない。
④ 認知症は、第一の視点として、中枢神経系の病気としてよりも障害としてみるべきである。
⑤ ケアは、安全な環境を提供し、基本的ニーズを満たし、身体的なケアを与えることが中心となる。
④ 認知症は、第一の視点として、中枢神経系の病気としてよりも障害としてみるべきである。
となります。
パーソンセンタード・ケア
パーソンセンタードケア は、Tom Kitwood(トム・キットウッド)が提唱した認知症の方の介護のための考え方です。
トム・キットウッドは「医学モデル」に基づく 従来の認知症についての捉えかたを見直し、認知 症の人の「その人らしさ(personhood)」を尊重 するケア、すなわち「パーソンセンタードケア」 の実践を主張した 。
出典:山戸隆也(2009). 認知症高齢者を対象としたパーソンセンタードケアの理念に関する研究-介護福祉教育における社会的認識についての心理学の視点-, 四條畷学園短期大学紀要 , 42, 21-26.
パーソンセンタードケア を簡単に説明すると、「介護者が認知症の方に対して、疾患という固定観念で捉えずに、その人らしさ(personhood)を重要視するケア」というものです。
過去の医学的なモデルでは「認知症=記憶・思考・注意能力などの認知機能が緩やかに低下していき、緩和は可能だが根本的には治らない」という考え方が主流で、認知症当事者の方の内面への介入はあまり積極的には行われてきませんでした。
そのため、認知症の方を対象とした従来のケアでは、「食事」「排泄」「入浴」といった生活面での清潔さや安全さが重視されてきました。
トム・キットウッドのパーソンセンタードケアの考え方では、「認知症当事者の方の行動は、脳の病気のみに由来するのではなく、より豊かな要素が背景に存在する」と考えます。
そのため、従来のケアのみでなく、当事者の方の認知機能の維持と向上を目的として当事者の方の内面を重視した関わりを新たに加えた視点を持っています。
④ 認知症は、第一の視点として、中枢神経系の病気としてよりも障害としてみるべきである。
これまで説明してきたように、パーソンセンタードケアでは、認知症を病気という大きい枠組みではなく、「脳の障害」であり、当事者の方によって「脳の障害の程度」が異なり、そのほかの要因と絡み合って、現在の行動が生じていると捉えます。
そのため、選択肢④「認知症は、第一の視点として、中枢神経系の病気としてよりも障害としてみるべきである」は正しいといえます。
残りの選択肢を見てみましょう!
① 問題行動を示したときは、効率的に管理しなければならない。
効率的な管理の定義が難しいところですが、「Aが生じたらBを行う」というようなマニュアル化された画一的な対処法をとるを意味していると考えます。
このようなマニュアル化された対処は、パーソンセンタードケアの理念とは少しずれてしまいます(勿論、必要な場合もあるでしょう)。
当事者の方の話を聴き、先に画像で示したような問題行動の背景要因を考えて、それぞれの方に即した対応を取っていくことが最も求められることと考えられます。
交渉
介護者は、認知症のする人のことはわかっているとは思い込まず、あえて尋ね、聞く。
出典:山戸隆也(2009). 認知症高齢者を対象としたパーソンセンタードケアの理念に関する研究-介護福祉教育における社会的認識についての心理学の視点-, 四條畷学園短期大学紀要 , 42, 21-26.
そのため、選択肢①「問題行動を示したときは、効率的に管理しなければならない」は最も適切とは言い難く、問題の回答としては不適といえます。
② ケアで重要なことは、介護者自身の不安や弱さなどは考慮せず、理性的に行うことである。
上の表は山戸(2009)であげられているパーソンドセンターケアの具体的な方法になります。
そのなかには、「素直で偏見のない態度」「素直に喜び人生の恵みに感謝する」「介護者はしばらく手を休め、ゆとりをもち、身体と心に休息を与える」など介護者自身の態度についていくつか触れられています。
その文言を見ると、理性的な態度というよりもむしろ素直な態度であることが推奨されています。
その点はカウンセリングに通ずる部分があるでしょう。
したがって、選択肢②「ケアで重要なことは、介護者自身の不安や弱さなどは考慮せず、理性的に行うことである」は不適切といえます。
③ 認知症の治療薬が開発されるまで、専門家として認知症の人にできることはほとんどない。
こちらに関しては、まずはパンフレット*出典記載の中にある当事者の方の文章を見てみましょう。
「あなたが私たちにどう接するかが、病気の進行に大きな影響を与える。あなたの接し方によって、私たちは人間らしさを取り戻し、自分たちはまだ必要とされている、価値のある存在なのだと感じることができるのだ。〜中略〜私たちに自信を与え、抱きしめ、励まし、生きる意味を与えてほしい。今の私たちと、その私たちがまだできることを認めて尊重し、社会的なつながりを保たせてほしい。」
(クリスティーン・ブライデン著、馬籠久美子・絵垣陽子訳『私は私になっていく 痴呆とダンスを』(株)クリエイツかもがわ、2004)
このように、もともと当事者の方を1人の人として尊重する態度でケアをすることで、認知症の回復をもたらすという考えが根本にあります。
そのため、選択肢③「認知症の治療薬が開発されるまで、専門家として認知症の人にできることはほとんどない」はパーソンセンタードケア の理念とは相反する考え方であるため、問題の回答としては不適といえます。
⑤ ケアは、安全な環境を提供し、基本的ニーズを満たし、身体的なケアを与えることが中心となる。
衣食住含めた人間としての基本的な欲求や「安全な環境」や「身体的ケア」などに重きを置くケアは、従来のケアに該当します。
パーソンセンタードケアでは、それらに加えて、「当事者の方の内面」つまり「心理的なニーズ」を重視していきます。
そのため、選択肢⑤「ケアは、安全な環境を提供し、基本的ニーズを満たし、身体的なケアを与えることが中心となる」は問題の回答としては不適当となりますね。
まとめ
第3回公認心理師資格試験の問21は、認知症当事者へのパーソンセンタード・ケアに関する問題でした。
今回の記事で紹介した介護保険制度に関して参考となる資料及びサイトに関するリンクを下に貼っておきます。
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