公認理師資格試験 過去問解説 問128 感情と文化の関連性
- 2023.02.09
- 公認心理師(第3回)
- 感情及び人格, 第3回公認心理師試験
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第3回公認心理師試験(令和2年12月20日実施)|一般社団法人日本心理研修センター
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問128 感情と文化の関連性について、不適切なものを1つ選べ。
① 各文化にはそれぞれ特異な社会的表示規則があり、それによって感情表出が大きく異なり得る。
② 社会的構成主義によれば、それぞれの文化に固有の感情概念や感情語によって、感情経験が大きく異なり得る。
③ 日米比較研究によれば、見知らぬ他者と同席するような状況では、概して日本人は表情が乏しくなる傾向がある。
④ 日本で優勢とされる相互協調的自己の文化では、米国で優勢とされる相互独立的自己の文化に比して、怒りや誇りが経験されやすい。
出典:第3回公認心理師試験(令和2年12月20日実施)|一般社団法人日本心理研修センター
選択肢の解説
①各文化にはそれぞれ特異な社会的表示規則があり、それによって感情表出が大きく異なり得る
P. Ekman エクマン は、感情表出の文化的な差異を説明するために、表情の研究を行いました。
この文化的差異を説明するための概念として、社会的表示規則を提唱しています。
社会的表示規則とは、
表示規則とは、様々な社会的環境、役割などのもとで、どの様に情動表出を管理するかについての社会的、文化的規範や因習
出典:中村真(1991). 情動コミュニケーションにおける表示・解読規則 :概念的検討と日米比較調査, 大阪大学人間科学部紀要, 17, 115-145.
とされます。
Ekmanは表情をつかさどる筋肉や神経といった生理学的な要素が表情と情動の関係性の普遍性を示し、社会的表示規則の文化による異同といった文化的な要素が差異を示しているとしました。
これを神経文化モデルといいます。
以上のことから、選択肢①「各文化にはそれぞれ特異な社会的表示規則があり、それによって感情表出が大きく異なり得る」は、この神経文化モデルを指し示した正しい記述といえます。
②社会的構成主義によれば、それぞれの文化に固有の感情概念や感情語によって、感情経験が大きく異なり得る
社会的構成主義とは、簡単に説明すると、「社会的な関係性のなかでの相互作用によって、知識が獲得される」ということになります。
この社会的構成主義の立場から「感情」について考えると、感情は社会的・言語的に形成されるということでしょう。
感情概念や感情語は言語圏によって大きく差があることがわかっています。
つまり、個人が所属する言語圏(文化圏)によって感情経験が大きく異なることになります。
よって選択肢②「社会的構成主義によれば、それぞれの文化に固有の感情概念や感情語によって、感情経験が大きく異なり得る」は正しい記述といえます。
③日米比較研究によれば、見知らぬ他者と同席するような状況では、概して日本人は表情が乏しくなる傾向がある
Ekmanの比較研究では、「日本人は他者への不快感情を抑制する」と指摘されています。
これを選択肢の文脈にあわせて考えると、見知らぬ他者と同席するような状況で、「不安や緊張」といった不快な感情を抑制する傾向が強く、概して表情が乏しくなると考えられます。
そのため、選択肢③「日米比較研究によれば、見知らぬ他者と同席するような状況では、概して日本人は表情が乏しくなる傾向がある」は正しい記述といえます。
④日本で優勢とされる相互協調的自己の文化では、米国で優勢とされる相互独立的自己の文化に比して、怒りや誇りが経験されやすい
選択肢の通り、日本では相互協調的自己観が優勢とされ、米国では相互独立的自己観が優勢とされています。
相互協調的自己観では「個人が互いに結びついているという感覚」を重要視しており、相互独立的自己観の「個人の独自性を主張するという感覚」とは大きく異なるといえます。
相互協調的自己観と怒りや誇りの関係性を示した研究は見当たりませんでしたが、高田ら(1996)によれば、
- 相互協調的自己観 → 評価懸念 、 他者への親和・順応
- 相互独立的自己観 → 独断性 、 個の信頼性・主張
が強く関係しているとされます。
このように集団での評価や集団内でのまとまりを重視するような日本文化では、個別の主張や反発する主張などは他の文化と比して少なく、怒りは経験されにくいと(表出しにくい)考えられます。
また、同様に、何らかの成果も集団に属することになるため、誇りも経験されにくいでしょう。
よって、選択肢④「日本で優勢とされる相互協調的自己の文化では、米国で優勢とされる相互独立的自己の文化に比して、怒りや誇りが経験されやすい」は不適切な記述といえます。
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