公認理師資格試験 過去問解説 問112 流動性知能と結晶性知能
- 2023.01.13
- 公認心理師(第3回)
- 第3回公認心理師試験, 認知心理学
第3回公認心理師試験の過去問や正答は以下のサイトで入手可能です。
第3回公認心理師試験(令和2年12月20日実施)|一般社団法人日本心理研修センター
公認心理師資格試験の過去問をしっかりと振り返ることで「自分に必要な知識は何か」を知るための手がかりとしてくださいね!
【公認心理資格試験】試験勉強の仕方。ブループリントに記載されている出題割合で勉強の範囲を狭めない方がいい理由について解説します!
問112 流動性知能の特徴として、不適切なものを1つ選べ。
① 図形を把握する問題で測られる。
② いわゆる「頭の回転の速さ」と関連する。
③ 学校教育や文化的環境の影響を受けやすい。
④ 新しい課題に対する探索的問題解決能力である。
⑤ 結晶性知能と比べて能力のピークが早期に訪れる。
出典:第3回公認心理師試験(令和2年12月20日実施)|一般社団法人日本心理研修センター
となります。
流動性知能と結晶性知能
流動性知能 fluid intelligence とは、Cattell キャッテル が提唱した知能因子説で提唱された概念です。
キャッテルは結晶性知能 crystallized intelligenceと流動性知能の2つの因子で知能について説明を試みました。
それぞれの定義は以下の通りです。
流動性知能
新しい場面での適応を必要とする際に働く能力であり、脳髄ないし固体の生理的成熟に密接に関係していると考えられている。
結晶性知能
過去の学習経験を高度に適用して得られた判断力や習慣(つまり経験の結果が結晶化されたもの)であり、流動性知能を基盤とするが、経験の機会など環境因子、文化因子により強く影響されると考えられている。
出典:心理学辞典|有斐閣
この2つの知能の違いは厳密に分類することは難しいですが、簡単にまとめると、以下の特徴があります。
流動性知能
- 新しい情報の獲得、素早い操作や処理。
- 暗記力・記憶力・直感力・推理力など。
- 8歳から25歳頃がピークで65歳前後で徐々に低下が見られる。
結晶性知能
- 経験や学習によって獲得された言語的な能力。
- 洞察力、理解力、批判や創造の能力。
- 経験や学習によっては20歳以降も上昇を続けて高齢になっても比較的安定している。
選択肢の解説
①図形を把握する問題で測られる
厳密ではありませんが、ざっくりと分類すると、結晶性知能はいわゆる「言語性の知能」を示し、流動性知能は「動作性の知能」を表します。
動作性の知能とは、目に見える情報を理解・記憶する能力や、視覚情報と手や身体などの動作を協応させて処理を行う能力などを含んでいます。
そのため、測定するための検査では、図形を用いたり、絵が用いられることが多いです。
よって、選択肢①「図形を把握する問題で測られる」は流動性知能に関する適切な記述と考えられるため、回答としては不適切となります。
②いわゆる「頭の回転の速さ」と関連する
流動性知能には、新しい情報への向き合い方(操作・処理)、直感力や推理力などが含まれます。
「頭の回転が速い」という言葉には、次々に考えを出したりまとめる、知識を素早く検索して判断を行う、などの意味があります。
処理を素早く行うこともこの能力に含まれていますので、選択肢②「いわゆる「頭の回転の速さ」と関連する」は流動性知能に関する記述といえます。
③ 学校教育や文化的環境の影響を受けやすい
流動性知能は環境などの外的要因に左右されにくい知能とされます。
こちらは結晶性知能の記述となりますね。
よって選択肢③「学校教育や文化的環境の影響を受けやすい」は流動性知能の記述としては不適切となるため、本問題の正答となります。
④新しい課題に対する探索的問題解決能力である
流動性知能は新しい情報に対する処理を行う能力とされています。
そのため、選択肢④「新しい課題に対する探索的問題解決能力である」は流動性知能の正しい記述といえます。
⑤結晶性知能と比べて能力のピークが早期に訪れる
流動性知能のピークは18歳から25歳前後、結晶性知能のピークは20歳前後とされています。
結晶性知能が「環境」という要因に大きく左右されるため、高校卒業後から短期大学・専門学校・大学などの教育課程を終えていくにあたって一旦のピークを迎えますが、低下していかないという性質があることと、研鑽によってその後も高まっていくことが特徴です。
流動性知能と結晶性知能を比較したときに、流動性知能は一律でピークを迎える時期が一緒になりますが、結晶性知能は個人の研鑽具合や環境によって異なるため、相対的には流動性知能のピークの方が早く訪れます。
よって選択肢⑤「結晶性知能と比べて能力のピークが早期に訪れる」は流動性知能の正しい記述といえます。
まとめ
Cattell キャッテル の知能因子説
流動性知能
- 新しい情報の獲得、素早い操作や処理。暗記力・記憶力・直感力・推理力
- 18歳〜25歳でピークが訪れ、65歳前後で徐々に低下する
結晶性知能
- 経験や学習によって獲得された言語的な能力。洞察力、理解力、批判や創造の能力。
- 経験や学習環境によっては20歳以降も上昇を続けて高齢になっても比較的安定している。
-
前の記事
公認理師資格試験 過去問解説 問111 児童相談所の体制と連携 2023.01.09
-
次の記事
公認理師資格試験 過去問解説 問113 ワーキングメモリ・モデル 2023.01.14
コメントを書く