公認心理師資格試験 過去問解説 第4回 午後 問97|心理療法の効果検証とランダム化比較試験〈RCT〉

第4回公認心理師試験 午後問97 心理療法の効果検証とランダム化比較試験の解説図 公認心理師試験

第4回公認心理師試験・午後問97は、心理療法の効果を検証するために用いられる研究方法を問う問題です。

正答は ③ ランダム化比較試験〈Randomized Controlled Trial:RCT〉 です。

心理療法の効果を検証するには、「治療を受けた人が良くなった」という前後比較だけでは不十分です。自然回復、時間経過、期待、他の支援などの影響をできるだけ分けて考える必要があります。

RCTでは、研究参加者をランダムに介入条件へ割り付け、介入群と比較群の結果を比較することで、介入そのものの効果を検討します。

第4回公認心理師試験 午後問97 心理療法の効果検証とランダム化比較試験の解説図

問題

心理療法における効果検証に用いられる方法として、最も適切なものを1つ選べ。

  1. 主成分分析
  2. クラスター分析
  3. ランダム化比較試験
  4. コレスポンデンス分析
  5. 修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチ

正答は ③ ランダム化比較試験 です。

正答③|ランダム化比較試験〈RCT〉とは

RCTは、研究参加者をランダムに2つ以上の条件へ割り付け、介入後の結果を比較する実験研究です。

たとえば、ある心理療法の効果を調べる場合、

  • 心理療法Aを受ける群
  • 通常治療を受ける群
  • 別の心理療法を受ける群
  • 待機リスト群

などを設定し、症状や機能の変化を比較します。

Cochraneでは、RCTを、参加者をランダムに複数の治療条件へ割り付けて、そのアウトカムを比較する実験研究として説明しています。

なぜ「ランダム化」が重要なのか

参加者を本人や研究者の判断で群分けすると、群の性質に偏りが生じる可能性があります。

たとえば、

「意欲が高い人だけ新しい治療を受ける」

という状況では、治療法の効果なのか、もともとの意欲の高さの影響なのかを区別しにくくなります。

ランダム割付を用いることで、

  • 年齢
  • 重症度
  • 性格
  • 治療への期待
  • 既往歴
  • その他の未知の要因

などが特定の群へ偏るリスクを抑えます。

ランダム化は、選択バイアスや交絡の影響を小さくし、群間比較の妥当性を高めるために重要です。

RCTなら必ず正しいとは限らない

RCTは強力な研究デザインですが、「RCTであれば無条件に信頼できる」という意味ではありません。

研究結果を読む際には、

  • 割付方法は適切か
  • 割付の隠蔽が行われているか
  • 脱落が多すぎないか
  • アウトカムは妥当か
  • 解析方法は適切か
  • 介入は計画どおり実施されたか
  • 結果の選択的報告がないか

などを確認する必要があります。

Ig Knowledgeの第3回問45|効果研究とメタ分析でも、心理療法の効果研究の考え方を整理しています。

心理療法RCTで難しい「盲検化」

薬物試験では、参加者や治療者がどの薬を使っているか分からないようにする二重盲検が可能な場合があります。

しかし心理療法では、

  • セラピストは自分が何を実施しているか分かる
  • クライエントもどの治療を受けているか分かることが多い

ため、完全な盲検化が難しいという特徴があります。

そのため心理療法のRCTでは、

  • 評価者を盲検化する
  • 標準化された尺度を使う
  • 治療マニュアルを用いる
  • 治療忠実度〈treatment fidelity〉を確認する
  • 脱落やクロスオーバーを適切に扱う

などの工夫が重要になります。

待機リスト対照群だけでは十分とは限らない

心理療法のRCTでは、待機リスト群が比較対象になることがあります。

しかし、

「治療を受ける」

対

「何も受けず待つ」

という比較では、

  • 治療者と会うこと
  • 話を聞いてもらうこと
  • 改善への期待
  • 定期的に評価されること

など、心理療法の特異的技法以外の影響も含まれます。

したがって研究目的によっては、通常治療や別の心理療法など、より厳しい比較条件を設定する必要があります。

有効性〈efficacy〉と有用性〈effectiveness〉

臨床研究では、

efficacy

統制された研究条件で、その介入に効果があるかを検討する。

effectiveness

日常臨床に近い現実的条件で、その介入が実際に役立つかを検討する。

という区別があります。

RCTは両方の検討に用いられますが、参加基準を厳密にした試験ほど、実際の臨床現場への一般化には注意が必要です。

① 主成分分析|正答ではない理由

主成分分析〈Principal Component Analysis:PCA〉は、多数の変数を少数の合成変数へ要約するための多変量解析です。

たとえば、複数の心理尺度得点を少数の主成分へまとめるときなどに使います。

心理療法の介入効果を検証する研究デザインそのものではありません。

したがって①は不適切です。

② クラスター分析|正答ではない理由

クラスター分析は、似た特徴を持つ人や対象をグループ化する方法です。

たとえば、症状プロフィールが似た患者をいくつかのサブグループへ分類する研究に使えます。

しかし、心理療法の効果を介入群と比較群で検証する研究デザインではありません。

④ コレスポンデンス分析|正答ではない理由

コレスポンデンス分析〈対応分析〉は、クロス集計表などのカテゴリカルデータに含まれる関係性を低次元空間上に表現する方法です。

カテゴリ間の関連を視覚化する目的などに使われます。

心理療法の因果的な効果を検証する方法ではありません。

⑤ 修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチ|正答ではない理由

修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチ〈M-GTA〉は、質的データから概念やカテゴリーを生成し、現象やプロセスを理論化する質的研究法です。

たとえば、

「心理療法を受けた人がどのような過程で変化を経験したか」

をインタビューから理論化するには有用です。

しかし、

「心理療法Aは比較条件より症状改善効果が高いか」

という介入効果の比較にはRCTが適しています。

効果研究はRCTだけではない

心理療法研究には、

  • 症例研究
  • 単一事例実験
  • 観察研究
  • 非ランダム化比較試験
  • RCT
  • 質的研究
  • 系統的レビュー
  • メタ分析

などさまざまな方法があります。

研究質問によって適切な方法は異なります。

「RCTが最も上だから、他の研究法は価値がない」と考えるのは適切ではありません。

RCTは、特に介入の平均的な効果を比較的厳密に検討することに強みがあります。

操作チェックや準実験との関係

Ig Knowledgeの第6回問6|操作チェックと心理学実験では、実験操作が意図どおり機能したかを確認する「操作チェック」や、ランダム割付が困難な場面で用いられる準実験も解説しています。

RCTではランダム割付が大きな特徴ですが、学校・地域・医療現場などでは倫理的・実務的にランダム化が難しい場合があります。

その場合には準実験など、研究状況に合ったデザインを選択します。

試験での見分け方

本問では、選択肢を「研究デザイン」と「分析手法」に分けると簡単です。

  • 主成分分析 → 多変量解析
  • クラスター分析 → 多変量解析
  • ランダム化比較試験 → 介入研究デザイン
  • コレスポンデンス分析 → 多変量解析
  • M-GTA → 質的研究法

「心理療法の効果検証」という問いに最も直接対応するのは③です。

まとめ

第4回公認心理師試験・午後問97の正答は ③ ランダム化比較試験〈RCT〉 です。

RCTでは、

参加者をランダムに条件へ割り付け、介入群と比較群のアウトカムを比較する

ことで、心理療法の効果を検討します。

試験では、

介入効果の比較 → ランダム割付 → RCT

という対応を押さえておきましょう。

参考資料

  • 一般財団法人 公認心理師試験研修センター|第4回公認心理師試験 午後問題・正答
  • Cochrane|Randomised controlled trial / study design guidance
  • Cochrane Handbook for Systematic Reviews of Interventions

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