公認心理師資格試験 過去問解説 第6回 午前 問20|フォーカシングのフェルトセンス

公認心理師過去問 第6回20 公認心理師試験

第6回公認心理師試験・午前問20は、E. T. Gendlinが開発したフォーカシングにおける中心概念を問う問題です。正答は③ フェルトセンスです。

フェルトセンスとは、ある問題や状況について身体に感じられる、まだ明確な言葉にはなっていない複雑で曖昧な感覚を指します。単なる痛みや緊張のような身体症状ではなく、「何か意味を含んでいるが、まだはっきり言葉にできない」という点が重要です。

実際の問題文

問20 E. T. Gendlinによって開発されたフォーカシングの概念で、日常生活の中で感じている複雑で曖昧ではあるが、何らかの意味を含んだ身体感覚として、適切なものを1つ選べ。

① サルコペニア
② ヒポコンドリー
③ フェルトセンス
④ アレキシサイミア
⑤ ソマティックマーカー

問題文の読み解き

この問題のキーワードは、「Gendlin」「フォーカシング」「複雑で曖昧」「何らかの意味を含んだ身体感覚」です。これらがそろえば、フェルトセンスを選びます。

正答:③ フェルトセンス

フェルトセンスは、ある状況について身体に感じられる全体的で曖昧な感覚です。単一の感情名や身体部位の症状に還元できず、「何か引っかかる」といった、意味を含む未分化な感覚として体験されます。

フェルトセンスは「ただの身体感覚」ではない

単なる身体症状と区別することが重要です。「肩が痛い」「心拍が速い」という感覚だけでは、それ自体はフェルトセンスとは限りません。

Gendlinとフォーカシング

Eugene T. Gendlinは、心理療法研究の中で、クライエントが自分の内側にある曖昧な感覚へ注意を向け、それを言葉にしながら変化していく過程に注目しました。

フォーカシングの基本的な流れ

フォーカシングでは、特定の問題についてすぐに分析や結論を出すのではなく、身体にどのような感じがあるかを静かに確かめます。そのうえで、感じに合う言葉やイメージを探し、身体感覚との一致を確かめていきます。

フェルトシフトとの関係

フェルトセンスにぴったり合う言葉や理解が見つかったときに、身体感覚が変化したり、問題の見え方が変わったりすることがあります。このような変化はフェルトシフトと呼ばれます。

各選択肢の考え方

① サルコペニア

誤りです。主に加齢などに伴う筋量、筋力、身体機能の低下に関わる医学・老年学領域の概念です。

② ヒポコンドリー

誤りです。健康や疾病への強い心配に関連する古典的な概念です。

③ フェルトセンス

正答です。Gendlinのフォーカシングにおける中心概念です。

④ アレキシサイミア

誤りです。自分の感情を同定したり言語化したりすることの難しさなどに関わる概念です。

⑤ ソマティックマーカー

誤りです。A. Damasioの理論に関連し、過去の経験に伴う身体的・情動的反応が意思決定を導くという考え方です。

フェルトセンスと感情は同じではない

「悲しい」「腹が立つ」「不安だ」と明確に名前をつけられる感情と、フェルトセンスは同じではありません。フェルトセンスは、まだ感情名や言葉に十分整理されていない状態を含みます。

フェルトセンスとアレキシサイミアの違い

アレキシサイミアは感情認識・言語化の困難さを説明する概念です。一方、フェルトセンスは「言葉になっていない体験そのもの」に注目するフォーカシングの概念です。

試験での見分け方

  • Gendlin → フォーカシング、フェルトセンス
  • Damasio → ソマティックマーカー
  • アレキシサイミア → 感情の同定・言語化の困難
  • サルコペニア → 筋量・筋力・身体機能の低下

臨床での注意

フォーカシングでは、支援者が「その身体感覚は怒りです」などと一方的に意味づけるのではなく、本人が自分の感覚に注意を向け、本人の中でしっくりくる表現を探すことが重要です。

フェルトセンスは「意味のある曖昧さ」

フェルトセンスの特徴は、曖昧さそのものではなく、その曖昧さの中に「何か意味がありそうだ」と感じられる点です。たとえば、ある人との関係について考えたとき、胸の奥に重さを感じるが、それが悲しみなのか怒りなのかはまだ分からない、というような体験です。

この段階で急いで感情名を決めるのではなく、その感覚に注意を向け、どんな言葉やイメージが近いのかを探ります。フェルトセンスは、まだ十分に言語化されていない体験を扱う入口になります。

「感じること」と「解釈すること」を分ける

フォーカシングでは、最初から原因分析をするのではなく、今ここで身体にどのような感じがあるかを確かめます。支援者が意味を決めるのではなく、本人が「この言葉は違う」「こちらの表現のほうが近い」と身体感覚に照らして確認していくことが重要です。

来談者中心療法との関係

GendlinはRogersの来談者中心療法の研究環境で、心理療法がうまく進むクライエントの体験過程に注目しました。その後、内的な体験に注意を向ける手続きをフォーカシングとして体系化しました。したがって歴史的な接点はありますが、来談者中心療法とフォーカシングは同一概念ではありません。

ソマティックマーカーとの違いをもう一段整理する

ソマティックマーカー仮説では、過去の経験に結びついた身体的・情動的反応が、選択や意思決定を方向づけると考えます。これに対してフェルトセンスは、ある状況全体について感じられる曖昧で意味を含んだ身体感覚そのものに注意を向けます。どちらも身体反応を扱いますが、理論の目的と位置づけが異なります。

臨床で扱う際の安全性

身体感覚へ注意を向けることがすべての人に常に適しているわけではありません。強いトラウマ反応や身体症状がある場合には、本人の状態を確認し、無理に内的感覚へ集中させない配慮が必要です。また、身体症状について医学的評価が必要な可能性がある場合には、心理的意味だけで説明せず、必要に応じて医療につなげます。

フェルトセンスと言語化の関係

フェルトセンスは、最初から明確な言葉として存在するわけではありません。むしろ、言葉になる前の曖昧な体験に注意を向け、そこに合う表現を探していくことがフォーカシングの中心です。

言葉が見つかったときも、それを正解として固定するのではなく、身体感覚に照らして「本当にこれで合っているか」を確かめます。この往復が、単なる知的分析とフォーカシングを区別する重要な点です。

フェルトセンスを扱うときの誤解

フェルトセンスは、身体に注意を向ければ必ず「本当の答え」が出てくるという考え方ではありません。体験はそのときどきで変化し、言葉にならないまま残ることもあります。フォーカシングでは、結論を急ぐより、曖昧さを保ちながら丁寧に確かめる姿勢が重視されます。

また、支援者の解釈を当てる技法でもありません。本人の体験に沿って、言葉やイメージが身体感覚に合っているかを一緒に確かめることが中心です。

したがって、曖昧さを急いで消さず、その感覚に丁寧に留まることもフォーカシングの重要な特徴です。

まとめ

第6回午前問20の正答は③ フェルトセンスです。フェルトセンスとは、ある状況について身体に感じられる、複雑で曖昧だが意味を含んだ全体的な感覚を指します。

参考文献

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