公認理師資格試験 過去問解説 問8 ヒューリスティックス

公認理師資格試験 過去問解説 問8 ヒューリスティックス

第5回公認心理師試験の過去問や正答は以下のサイトで入手可能です。

第5回公認心理師試験(令和4年7月17日実施)|一般社団法人日本心理研修センター

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問8 ヒューリスティックスの説明として、適切なものを1 つ選べ。

① いくつかの具体的事例から一般的、普遍的な法則性を結論として導く手続のことである。

② 外的な事象をもとに内的なモデルを構成し、その操作により事柄を理解する手続のことである。

③ 一連の手順を正しく適用すれば、必ず正しい結果が得られることが保証されている手続のことである。

④ 現在の状態と目標とする状態を比較し、その差異を最小化するような手段を選択していく手続のことである。

⑤ しばしば経験から導かれ、必ずしも正しい結果に至ることは保証されていないが、適用が簡便な手続のことである。

出典:第5回公認心理師試験(令和4年7月17日実施)|一般社団法人日本心理研修センター
正答は ⑤ しばしば経験から導かれ、必ずしも正しい結果に至ることは保証されていないが、適用が簡便な手続のことである

ヒューリスティックスとは

ヒューリスティックス heuristics とは、

ある問題を解決する際に、必ずしも成功するとは限らないが、うまくいけば解決に要する時間や手間を減少することができるような手続きや方法をヒューリスティクスという。

出典:心理学辞典|有斐閣

ヒューリスティックを簡潔に説明すると、必ず正解するとは限らないが、経験をもとにした直感的な判断方法といえます。

何か複雑な問題に直面化したときに、これまでに経験したより簡単な問題に置き換えるという思考方法です。

ヒューリスティックでは、複雑な問題の判断を迫られた際に、逐一詳細に分析するのではなく、過去の経験をもとに簡略化します。

脳の容量を節約してコスパ良く思考することができるメリットがあります。

ただし、個々の事例に合わせて深く考えるという訳ではないため、間違えてしまうリスクもあるということです。

以上のことから、選択肢⑤「しばしば経験から導かれ、必ずしも正しい結果に至ることは保証されていないが、適用が簡便な手続のことである」がヒューリスティックの適切な記述といえます。

選択肢の解説

ここでは選択肢として明らかに他の心理学用語が当てはまるもののみ解説します。

①いくつかの具体的事例から一般的、普遍的な法則性を結論として導く手続のことである

こちらの選択肢は「帰納法」あるいは「帰納推論」を表しています。

帰納推論 

いくつかの個別的知識から、一般的法則を導き出す思考過程である。

出典:心理学辞典|有斐閣

「個別具体的な事例」→「普遍的な法則」を導き出すような推論の方法を意味しています。

反対の意味の言葉として「演繹法」「演繹推理」がありますが、こちらは「一般的法則」を「個別の事例」に当てはめて理解しようとする方法になります。

よって、選択肢①「いくつかの具体的事例から一般的、普遍的な法則性を結論として導く手続のことである」は「帰納法・帰納推論」の説明となりますので、回答として不適切といえます。

③ 一連の手順を正しく適用すれば、必ず正しい結果が得られることが保証されている手続のことである

こちらの選択肢はアルゴリズムについての記述となっています。

アルゴリズムは心理学ではヒューリスティックの反対の意味を示しており、

ある方法に従えば必ずその問題が解決されるというような手続き

出典:心理学辞典|有斐閣

アルゴリズムではヒューリスティックと異なり、必ず正答を導くことが可能になりますが、その分解決までに時間がかかるというデメリットがあります。

よって、選択肢③「しばしば経験から導かれ、必ずしも正しい結果に至ることは保証されていないが、適用が簡便な手続のことである」は「アルゴリズム」の説明となりますので、回答として不適切といえます。

まとめ

  • ヒューリスティック:経験を活かした直感的な思考法。正解を導けるかどうかはわからないが、簡略化して素早く判断できるメリットがある。
  • アルゴリズム:その方法に従うことで必ず正解が得られるという手続きのこと。正解には導くことができるが、時間が大幅にかかる。
  • 帰納法・帰納推論:「個別具体的な事例」→「普遍的な法則」
  • 演繹法・演繹推理:「普遍的な法則」→「個別の事例の理解」