第5回公認心理師試験・午前問7は、観察法のチェックリスト法で、2人の評定者の判断がどの程度一致しているかを表す指標を問う問題です。
正答は③「κ係数(カッパ係数)」です。
ポイントは、単に「同じ評価になった割合」を見るだけではなく、偶然に一致する可能性を考慮して評定者間の一致度を評価するという点です。
問7の正答は③「κ係数」
選択肢は次の5つです。
- ① α係数
- ② γ係数
- ③ κ係数
- ④ φ係数
- ⑤ ω係数
観察法のチェックリスト法で、2人の評定の一致の程度を表す指標として最も適切なのは③ κ係数です。
κ係数とは
κ係数(Cohen’s kappa)は、2人の評定者がカテゴリー分類を行ったときの一致度を、偶然に生じる一致を考慮して評価する指標です。
考え方は、次の式で表せます。
κ =(観察された一致率 − 偶然に期待される一致率)÷(1 − 偶然に期待される一致率)
ここで、
- 観察された一致率:実際に2人の評定が一致した割合
- 偶然に期待される一致率:それぞれの評定傾向から、偶然でも一致すると考えられる割合
を意味します。
つまりκ係数は、「たまたま一致した分」を差し引いて、評定者間の一致を評価するための指標です。
単純な一致率とκ係数の違い
例えば、100件を2人で評定して90件で判断が一致していれば、単純な一致率は90%です。
しかし、あるカテゴリーが非常に多い場合などには、評定者が独立に判断していても偶然に同じカテゴリーを選ぶ可能性があります。
κ係数では、このような偶然による一致の影響を調整します。
そのため、2人の評定者によるカテゴリー判断の一致度を見るときには、単純一致率だけでなくκ係数が用いられます。
κ係数の値はどう読むか
κ係数は一般に−1から1の範囲をとります。
- 1:完全な一致
- 0:偶然に期待される程度の一致
- 負の値:偶然に期待されるよりも一致が少ない状態
値が大きいほど評定者間の一致が強いと解釈できます。
ただし、「κが0.6以上なら必ず十分」といった単一の基準を絶対視しないことも重要です。κの解釈は、カテゴリーの分布、研究目的、評定対象、必要とされる信頼性などによって変わります。
① α係数が誤りの理由
α係数は、一般にCronbachのα係数を指し、複数の項目が同じ構成概念をどの程度一貫して測定しているかという内的整合性を評価する代表的な信頼性指標です。
例えば、10項目からなる心理尺度で、それらの項目が全体として一貫した測定になっているかを検討するときに用いられます。
本問が尋ねているのは2人の評定者間の一致であり、尺度項目間の内的整合性ではありません。
したがって①は正答ではありません。
② γ係数が誤りの理由
γ係数は、代表的にはGoodman-Kruskalのγのように、順序尺度の2変数間の関連の方向や強さを表す指標として用いられます。
「2人が同じカテゴリーに評定したか」という一致度そのものを、偶然一致を調整して評価するκ係数とは目的が異なります。
したがって②は正答ではありません。
④ φ係数が誤りの理由
φ係数は、2つの二値変数の関連の強さを表す指標です。
2×2のクロス集計表で変数間の関連を見るときに用いられますが、2人の評定者の一致度を偶然一致まで考慮して評価する指標ではありません。
したがって④は正答ではありません。
⑤ ω係数が誤りの理由
ω係数は、心理尺度などの信頼性を評価する指標で、因子モデルに基づいて内的整合性を捉える方法として用いられます。
α係数と同様に、複数項目からなる測定の信頼性を考える場面で登場しますが、本問が問う2人の評定者間の一致度を表す指標ではありません。
したがって⑤は正答ではありません。
5つの係数を比較する
| 係数 | 主な用途 | 本問の「2人の評定の一致度」か |
|---|---|---|
| α係数 | 尺度項目の内的整合性 | × |
| γ係数 | 順序尺度変数間の関連 | × |
| κ係数 | 評定者間のカテゴリー判断の一致度を偶然一致を調整して評価 | 〇 |
| φ係数 | 2つの二値変数間の関連 | × |
| ω係数 | 尺度の信頼性・内的整合性 | × |
試験対策:「信頼性」と「一致度」を区別する
この問題では、「係数」という言葉だけで判断せず、何と何の関係を評価しているのかを確認することが重要です。
- 項目同士の一貫性を見る → α係数、ω係数
- 変数間の関連を見る → γ係数、φ係数
- 評定者同士の一致を見る → κ係数
特に、「2人の評定」「一致」という語が出てきたら、κ係数を想起できるようにしておくと判断しやすくなります。
まとめ
- 第5回公認心理師試験・午前問7の正答は③ κ係数
- κ係数は2人の評定者によるカテゴリー判断の一致度を評価する
- 単純一致率とは異なり、偶然に期待される一致を調整する
- κ=1は完全一致、κ=0は偶然に期待される程度の一致を示す
- 単一の数値基準だけでκの良否を絶対的に判断しない
- α係数・ω係数は主に内的整合性、γ係数・φ係数は変数間の関連をみる指標で、本問の評定者間一致とは目的が異なる


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