公認理師資格試験 過去問解説 問20 職場復帰支援について
- 2023.01.17
- 公認心理師(第4回)
- 産業・組織, 第4回公認心理師試験
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【問20】職場復帰支援
問20 職場復帰支援について、最も適切なものを1つ選べ。
① 産業医と主治医は同一人物が望ましい。② 模擬出勤や通勤訓練は,正式な職場復帰決定前に開始する。
③ 傷病手当金については,職場復帰の見通しが立つまで説明しない。
④ 職場復帰は,以前とは異なる部署に配置転換させることが原則である。
⑤ 産業保健スタッフと主治医の連携においては,当該労働者の同意は不要である。
正答は ②
② 模擬出勤や通勤訓練は,正式な職場復帰決定前に開始する
選択肢の解説
①産業医と主治医は同一人物が望ましい
産業医と主治医を同一人物が担うことについて禁止する法律等は存在していません。
しかし、産業医(従業員の健康管理)と主治医(患者の治療)の役割が異なっているということを考慮する必要があります。
具体例として、職場復帰に至るまでの一般的な判断のプロセスについて概観してみましょう。
ー一般的な職場復帰の判断に至るプロセスー
「治療を担っている主治医が職場復帰が可能であると判断した後に、本人の意思や主治医の意見、事業場内産業保健スタッフ(産業医、保健師、その他)の評価をもとに職場復帰が可能か否かを事業場内産業保健スタッフ等が中心となって判断を行う」
参考文献
これを見ると、「主治医は疾患の治療」、「産業医は職場内のスタッフとして職場復帰の判断」と役割が分担されています。
そのため、基本的には治療の主治医と職場の産業医が同一であることは想定されていないということになります。
また、公認心理師のような多重関係の兼ね合いは医師には適用されない部分もあるでしょうが、倫理的な観点からも産業医と主治医は別の人物であることが望ましいといえます。
よって、選択肢①「産業医と主治医は同一人物が望ましい」は適切とはいえません。
②模擬出勤や通勤訓練は,正式な職場復帰決定前に開始する
模擬出勤や通勤訓練等の試し出勤制度は、社内制度として設けることが可能である場合、
正式な職場復帰前に開始することで休業していた労働者の不安を和らげ、労働者自身が職場の状況を確認しながら復帰の準備を行うことができる
出典:改訂 心の健康問題により休業した労働者の職場復帰の手引き
ため望ましいとされています。
よって、選択肢②「模擬出勤や通勤訓練は,正式な職場復帰決定前に開始する」は適切な記述であり、問題の正答となります。
③傷病手当金については,職場復帰の見通しが立つまで説明しない
傷病手当金は、病気休業中に被保険者とその家族の生活を保障するために設けられた制度で、病気や怪我のために会社を休み、事業者から十分な報酬が受けられない場合に支給されます。被保険者が病気やけがのために働くことができず、会社を休んだ日が連続して3日間あったうえで、4日目以降、休んだ日に対して支給されます。
出典:傷病手当金 こんな時に健保-全国健康保険協会
そのため、休業開始時点のケアの一環として説明することが望ましいといえます。
(※全ての労働者が受給資格条件を満たしているとは限りません。)
よって選択肢③「傷病手当金については,職場復帰の見通しが立つまで説明しない」は不適切な記述となります。
④職場復帰は,以前とは異なる部署に配置転換させることが原則である
職場復帰が可能であると判断された場合、次に職場復帰支援プランの作成に入りますが、人事労務管理上の対応等についても検討することになります。
その際、
配置転換や移動の必要性,勤務制度変更の可否及び必要性
出典:改訂 心の健康問題により休業した労働者の職場復帰の手引き
を検討することになっています。
配置転換させることが原則ではありません。
そのため、問題文の記述のように「配置転換させること」は原則とはなっておらず、必要性を検討することが重要となってきます。
よって選択肢④は不適切な記述となります。
⑤産業保健スタッフと主治医の連携においては,当該労働者の同意は不要である
労働者の健康情報等は個人情報の中でも特に機微な情報であり、労働者の健康情報等は厳重に保護されなければなりません。とりわけメンタルヘルスに関する健康情報等は慎重な取扱が必要
出典:改訂 心の健康問題により休業した労働者の職場復帰の手引き
であるとされています。
労働者の健康情報等を収集する場合には、
あらかじめ本人の同意を得て、本人を通して行うことが望まれます。
主治医との連携にあたっては,事前に当該労働者への説明と同意を得て
出典:改訂 心の健康問題により休業した労働者の職場復帰の手引き
おくことが大前提となります。
よって、「当該労働者の同意」は必要であるため、選択肢⑤は不適切な記述となります。
まとめ
- 産業医と治療の主治医が同一であることを禁じる法律はないが、職場復帰支援の際には明確な役割分担があり、両者は異なる役割を果たす必要があるため、可能な限り同一人物でないことが望ましい。
- 模擬出勤や通勤訓練等の試し出勤制度は、「休業していた労働者の不安の緩和」や「労働者自身が職場の状況を確認しながら復帰の準備」に効果的と考えられるため、正式な職場復帰決定前に行われることが望ましい。
- 傷病手当金に関しては休業開始時点のケアの一環として説明することが望ましい。
- 職場復帰が決定した際は、配置転換や移動の必要性、勤務制度変更の可否及び必要性について検討する必要がある。必ずしも配置転換を行うというわけではない。
- 産業保健スタッフと主治医の連携においては,当該労働者の同意が必要である
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