公認理師資格試験 過去問解説 問93 物質関連障害について
- 2021.11.17
- 公認心理師(第3回) 資格試験
- 物質関連障害, 第3回公認心理師試験
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第3回公認心理師試験(令和2年12月20日実施)|一般社団法人日本心理研修センター
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【問93】物質関連障害
問93 物質関連障害について、正しいものを1つ選べ。
① 物質への渇望や強い欲求を身体依存という。
② 物質の使用を完全に中止した状態を離脱という。
③ 身体的に危険な状況にあっても物質の使用を反復することを中毒という。
④ 同じ効果を得るために、より多くの物質の摂取が必要になることを耐性という。
⑤ 物質の反復使用により出現した精神症状が、再使用によって初回よりも少量で出現するようになることを乱用という。
④ 同じ効果を得るために、より多くの物質の摂取が必要になることを耐性という
となります。
物質関連障害
物質関連障害 substance related disorders は、物質乱用・依存などの使用上の障害、過剰摂取による薬物中毒、薬物依存からの脱却時に生じる離脱症状など、物質使用に関連した障害すべてを含む名称です。
以下のものが含まれます。
- 物質中毒(薬物中毒)
- 物質乱用
- 物質依存症
- 物質離脱
- 物質誘発性〜障害
ちなみに、DSM-5では乱用と依存をまとめて物質使用障害として診断基準になっています。
物質とは、
- アルコール
- ニコチン
- カフェイン
- オピオイド
- 鎮静薬・抗不安薬・睡眠薬
- 大麻
- 幻覚剤
など、合法的な物質から違法物質までさまざまな物質が含まれています。
選択肢の解説
① 物質への渇望や強い欲求を身体依存という
依存には「身体依存 physical dependence」と「精神依存 psychological dependence」の2つがあります。
身体依存とは、薬物の摂取を止めると離脱症状と呼ばれる身体の症状が起こる状態のこと。
つまり、身体依存とは「薬物に対する身体の生理的な反応(離脱症状)」を意味していることがわかります。
次は精神依存に関して確認しておきましょう。
ある薬物を繰り返し摂取し、習慣的に使用していると、しだいに「ないと物足りない」「その薬物なしではいられない」という状態になります。このように薬物に対する渇望・欲求が生じる状態を精神依存といいます。
問題文にある「物質への渇望や強い欲求」は、身体依存というよりも「精神依存」に該当しますね。
よって選択肢①「物質への渇望や強い欲求を身体依存という」は、「精神依存」が正しく、今回の問題の回答としては不適切となります。
② 物質の使用を完全に中止した状態を離脱という
離脱 withdrawal とは、
依存性のある薬物などの反復使用を中止することから起こる病的な症状のことです。
とあります。
つまり依存を形成する薬物が減量されたり中止されることによってさまざまな症状が現れることを意味しています。
よって、選択肢②「物質の使用を完全に中止した状態を離脱という」は不適切な回答となりますね。
③ 身体的に危険な状況にあっても物質の使用を反復することを中毒という
中毒 intoxicationに関して、以下の解説を確認しておきましょう。
『依存』に基づいて『乱用』を続けることにより『中毒』症状が出現します。 急性中毒では「パニック」「意識や知覚の障害」ときには昏睡状態から死に至ることもあります。慢性中毒としては「幻覚・妄想状態を中心とする精神病性障害」「認知障害」「人格変化」などのほか、種々の臓器障害があります。薬物乱用の中断後も長期にわたって慢性中毒症状が続くことも少なくありません。
ご覧のように「中毒」は、「急性中毒」と「慢性中毒」にわけられますが、どちらも「物質を摂取したことにより生じる症状や問題」を意味しています。
急性中毒は短期間に大量に物質を摂取したことによる影響、慢性中毒は長期間に渡って物質を摂取し続けたことにより生じる影響、と捉えると良いでしょう。
問題文にある「身体的に危険な状況にあっても物質の使用を反復すること」という記述は依存の基準のひとつですね。
よって、選択肢③「身体的に危険な状況にあっても物質の使用を反復することを中毒という」は不適切な記述となります。
④ 同じ効果を得るために、より多くの物質の摂取が必要になることを耐性という
耐性 tolerance とは、
依存性薬物が効かなくなり、同じ効果を得るのに量を増やさないといけなくなること
出典:耐性|e-ヘルスネット
を意味しています。
依存に至るまでの過程として、この「耐性」は非常に重要で、簡単に理解すると、身体が生理学的に順応した(慣れた)ということになります。
「耐性」ができることによって物質を摂取することで得られる効果が薄くなるため量が多くなっていきます。
この「耐性」という用語自体は生理学的な意味合いが強いですが、実は「嗜癖化 addiction」に至るまでの精神的なプロセスにおいても同様のメカニズムが起こっています。
以上のことから、選択肢④「同じ効果を得るために、より多くの物質の摂取が必要になることを耐性という」は適切な記述といえ、問題の正答となっています。
⑤ 物質の反復使用により出現した精神症状が、再使用によって初回よりも少量で出現するようになることを乱用という
物質の反復使用により出現した精神症状が、再使用によって初回よりも少量で出現するようになることを「逆耐性 reverse tolerance」と言います。
特に覚醒剤やコカインなどの中枢神経に作用する薬剤の使用では、順応「耐性」が生じる一方で、感受性の増大「逆耐性」が生じやすいとされています。
代表的な例を挙げるとすると、覚醒剤により幻覚・妄想といった精神症状が生じた場合、再度使用すると「幸福感や高揚感」には耐性ができる一方で、幻覚・妄想には逆耐性ができてしまい少量でも生じやすくなるということが起きてきます。
したがって、選択肢⑤「物質の反復使用により出現した精神症状が、再使用によって初回よりも少量で出現するようになることを乱用という」は正しくは「逆耐性」であり、不適切な回答となります。
まとめ
第3回公認心理師資格試験の問93は、物質関連障害に関する問題でした❗️
関連する用語について確認しておきましょう。
- 身体依存
- 精神依存
- 中毒:急性中毒、慢性中毒
- 耐性
- 逆耐性
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