公認心理師資格試験 過去問解説 問47 知覚や意識「共感覚、幻覚、入眠時幻覚、幻肢」
- 2021.06.14
- 資格試験
- 第3回公認心理師試験
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【問47】知覚や意識
問47 知覚や意識について、誤っているものを1つ選べ。
① 共感覚は、成人より児童に生じやすい。
② 幻覚は、意識晴明時にも意識障害時にも生じる。
③ 入眠時幻覚がみられる場合は、統合失調症が疑われる。
④ 事故などで、四肢を急に切断した場合、ないはずの四肢の存在を感じることがある。
③ 入眠時幻覚がみられる場合は、統合失調症が疑われる
となります。
選択肢の解説
① 共感覚は、成人より児童に生じやすい。
共感覚(synaesthesia) とは、ある 1つの感覚様相の刺激が別の感覚様相の感覚を自動的に引き起こす現象のことをいう(ex.、Baron-Cohen & Harrison, 2003; Sagiv, 2005)
出典:南憲治(2010). 共感覚についての最近の知見, 帝塚山大学現代生活学部紀要, 6, 67-77.
つまり共感覚 synaesthesia とは、ある1つの刺激に対して通常1つの感覚として感じるはずの感覚が同時に別の感覚も生じるという現象のことをいいます。
代表的なものとして以下の種類があります❗️
- 文字に色が見える
- 音に色を感じる
- 数に色が見える
- 時間単位に色が見える
- 色を見ると音を感じる
特に、音[聴覚]から色を感じるという色聴が最もよく知られています。
共感覚の詳しいメカニズムは明らかになっていませんが、
- 感覚システムが未分化な状態で、ひとつの刺激が複数の感覚過程を刺激することで混合した感覚が生じる
- 脳の感覚野同士の結合が強まることで生じる
という二つの大きな仮説が考えられています。
一般的に、成人よりも児童で共感覚が生じやすく、発達に応じて本来備わっていた共感覚の程度が弱くなっていく[あるいは、失われていく]ことが知られています。
以上のことから、選択肢①「共感覚は、成人より児童に生じやすい」は正しく、問題の解答としては不適切といえます。
② 幻覚は、意識晴明時にも意識障害時にも生じる。
対象のない知覚を幻覚という。幻覚を示す感覚モダリティによって幻視、幻聴、幻嗅、体感幻覚などに区別される。また幻覚はその知覚の実在感によって真性幻覚と偽幻覚とに分けられる。真性幻覚とは実在感の明確なもので、偽幻覚とは実在感が弱く体験する人の主観では、表象と区別ができない程度のものである。
出典:心理学辞典|有斐閣
つまり、幻覚は実際にはないものをあるように感じる現象の総称で、感覚によって幻視[視覚]、幻聴[聴覚]、幻嗅[嗅覚]、体感幻覚[身体感覚・皮膚感覚]などに区別されます。
続いてこちらの説明を見てみましょう。
意識晴明時の体験か、意識水準の低下時の体験かを区別することが、その体験が生じる原疾患が何であるかの診断にとって重要である。
出典:心理学辞典|有斐閣
この記載をみると、幻覚は意識晴明時と意識障害時のどちらにも生じて、意識水準によって区別することで精神疾患の鑑別に役立つことがわかりますね。
ちなみに、
- 意識晴明時:統合失調症、老年期精神病 など
- 意識障害時:せん妄、アルコール依存、薬物依存 など
が代表的です。
以上のことから、選択肢②「幻覚は、意識晴明時にも意識障害時にも生じる」は正しく、問題の解答としては不適切といえます。
③ 入眠時幻覚がみられる場合は、統合失調症が疑われる。
Bumkeは入眠時幻覚の特微について、体験から了解可能であり、実体性に乏しく自ずからその錯誤を知つている等の点をあげ、入眠時幻覚を真性幻覚と区別し、入眠時仮幻覚一hypnagbge Pseudohalluzination一と呼称している。
出典:宮尾三郎 (1963). 入眠時幻覚と考えられる一症例について, 信州医誌, 12, 116-117.
要するに、入眠時幻覚は「寝入ってすぐに生じる了解可能な内容の幻覚」で「当事者に幻覚という自覚がある」という症状ですね。
この入眠時幻覚は、ナルコレプシーの4つの主な症状に数えられており、3分の1程度の割合で生じるようです。
ナルコレプシーでは、入眠後すぐにレム睡眠となるため、鮮明な夢(怖い内容も含む)を観てしまうことがあり、こちらが入眠時幻覚とされています。
場合によっては、現実と区別がつきにくいため、統合失調症と間違えられることも多いのですが、「了解可能な内容」「自覚がある」「入眠時のみに生じる」ことが、統合失調症の幻覚と異なる部分なので押さえておきましょう。
以上のことから、選択肢③「入眠時幻覚がみられる場合は、統合失調症が疑われる」は、統合失調症というよりもナルコレプシー が正しいため、選択肢として不適切といえます。そのため、問題の解答はこちらになります。
④ 事故などで、四肢を急に切断した場合、ないはずの四肢の存在を感じることがある。
この選択肢のような現象のことを幻肢と呼びます。
傷病のため手足などが切断された後も失われた部分をまだ存在するかのようにありありと感じたり、痛痒・しびれ・運動の感覚を経験したりする現象。
出典:心理学辞典|有斐閣
幻肢は実際にないものをあるように感じるという幻覚の定義には合致していますが、当事者の精神状態などの観点から幻覚とは区別されています。
また一説では、傷病のため手足などが切断された当事者の方の9割以上に生じるとされており、全体があるように感じたり一部があるように感じたりと、現れ方はそれぞれのようです。
以上のことから、選択肢④「事故などで、四肢を急に切断した場合、ないはずの四肢の存在を感じることがある」は正しく、問題の解答としては不適切といえます。
まとめ
第3回公認心理師資格試験の問47は、知覚や意識に関する問題でした❗️
キーワードは以下の通りです。
キーワード共感覚 synaesthesia
幻覚 hallucination
入眠時幻覚 hypnagbge Pseudohalluzination
幻肢 phantom limb
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