第6回公認心理師試験・午前問44は、児童養護施設に入所している子どもの家庭復帰が直近に見込まれる場面で、児童相談所が行う対応について、誤っているものを選ぶ問題です。正答は ③ 家庭裁判所に児童福祉施設入所措置解除を申請する です。
この問題では、施設入所中の子どもを家庭へ戻す際に、
- 子どもの意思を確認する
- 家庭環境を直接確認する
- 関係機関と退所後の支援を調整する
- 必要なら家庭復帰計画を変更・中止する
- 安全性を確認したうえで措置解除を判断する
という流れを理解しているかが問われています。
家庭復帰は、「保護者が引き取りたい」「子どもも帰りたい」という希望だけで決めるものではありません。児童相談所が施設や地域の関係機関と連携し、家庭環境、子どもの状態、再発リスク、退所後の支援体制などを確認したうえで、組織的に判断します。
- 問題
- 正答は③|措置解除は家庭裁判所へ申請する手続きではない
- 家庭裁判所はまったく関係しないのか
- 家庭復帰は「希望」だけで決めない
- ① 子どもの意思を確認するのは適切
- ② 家庭の状態を直接確認するのは適切
- ④ 要保護児童対策地域協議会との協議は適切
- ⑤ 「必要なら中止・修正する」と事前に伝えるのは適切
- 「家庭復帰」と「措置解除」は同じ瞬間ではないことがある
- 措置停止とは
- 家庭復帰後の時期も重要
- 児童相談所の「組織的判断」
- 子どもの最善の利益で考える
- 第6回問3「児童相談所の社会診断」とつなげる
- 家庭裁判所と児童相談所を区別する
- 試験での見分け方
- まとめ
- 関連記事
- 参考資料
- Yamashun|臨床心理士・公認心理師
- 公認心理師試験の過去問解説を続けて読む
問題
問題の要旨: 児童養護施設に入所している子どもの家庭復帰が近く見込まれる場合に、児童相談所が行う対応として誤っているものを選びます。
- 家庭復帰が見込まれる入所児童の意思を確認する。
- 家庭復帰する家庭の状態を具体的に直接確認する。
- 家庭裁判所に児童福祉施設入所措置解除を申請する。
- 要保護児童対策地域協議会と支援指針に関する協議を行う。
- 家庭復帰計画は必要に応じて中止・修正されることがあると、入所児童や保護者へ事前に伝える。
正答は ③ です。
正答は③|措置解除は家庭裁判所へ申請する手続きではない
児童養護施設への入所措置は、児童福祉法に基づく行政上の措置です。
家庭復帰を進める際には、児童相談所が中心となって、
- 子どもの状態
- 保護者の状態
- 家庭環境
- 親子関係
- 虐待等の再発リスク
- 地域の支援体制
などを総合的に評価します。
安全な家庭復帰が可能と判断されれば、措置停止等を経たうえで、最終的に措置解除が判断されます。
通常の家庭復帰に伴う措置解除について、
「家庭裁判所へ入所措置解除を申請する」
という手続きはとりません。
したがって③が誤りです。
家庭裁判所はまったく関係しないのか
ここは誤解しやすいポイントです。
施設入所と家庭裁判所が無関係という意味ではありません。
たとえば、保護者が施設入所等の措置に同意しない場合など、児童福祉法第28条に基づき、家庭裁判所の承認を得て施設入所等の措置を行う場面があります。
つまり、
施設入所の法的手続きの一部では家庭裁判所が関与することがある
一方で、
家庭復帰のたびに家庭裁判所へ措置解除を申請するわけではない
という区別が重要です。
試験では、この2つを混同しないようにします。
家庭復帰は「希望」だけで決めない
家庭復帰で最も大切なのは子どもの安全です。
保護者が、
「もう大丈夫です」
「子どもを返してください」
と希望していても、それだけで家庭復帰を決めることはできません。
また、子ども自身が帰宅を希望していても、家庭に重大な危険が残っている場合があります。
そのため児童相談所は、
- 子どもの意思
- 保護者の変化
- 家庭内の関係
- 生活環境
- 支援機関との関係
- 再発予防策
を合わせて判断します。
① 子どもの意思を確認するのは適切
家庭復帰は子どもの生活を大きく変える決定です。
そのため、子どもの年齢や発達段階に応じて、
- 家に帰りたいか
- 家庭で不安なことはあるか
- 誰と暮らしたいか
- 施設を離れることをどう感じているか
- 学校や友人関係をどうしたいか
など、本人の意思や気持ちを確認します。
もちろん、子どもが「帰りたい」と言えば必ず帰すという意味ではありません。
子どもの意思を尊重しつつ、安全性や家庭環境を含めて総合的に判断します。
したがって①は適切です。
② 家庭の状態を直接確認するのは適切
家庭復帰前には、書類上の情報だけでなく、実際の家庭環境を確認することが重要です。
児童相談所の担当者が家庭訪問等を行い、
- 住環境
- 保護者の生活状況
- 家族関係
- 子どもの生活スペース
- 養育能力
- 支援者の有無
- 危険要因の変化
などを確認します。
特に虐待を理由として施設入所していた場合には、
入所前に存在したリスクが本当に改善しているか
を直接確認する必要があります。
したがって②は適切です。
④ 要保護児童対策地域協議会との協議は適切
家庭復帰後、子どもと家族は地域の中で生活します。
児童相談所だけで家庭を継続的に見守ることはできません。
そこで、
- 市区町村
- 学校
- 保育所
- 医療機関
- 保健機関
- 福祉機関
- 児童相談所
などが連携する要保護児童対策地域協議会〈要対協〉が重要になります。
退所後に、
- 誰が家庭を見守るか
- どこが相談窓口になるか
- 学校で何を確認するか
- 状態が悪化したら誰へ連絡するか
といった支援方針を共有します。
家庭復帰後の安全を地域で支えるため、④は適切です。
⑤ 「必要なら中止・修正する」と事前に伝えるのは適切
家庭復帰計画は、一度作ったら必ずそのまま進めるものではありません。
家庭訪問、面会、外泊などを進める中で、
- 子どもの不安が強くなる
- 保護者の状態が悪化する
- 再び暴力や養育上の問題が生じる
- 家庭内の支援体制が崩れる
といった変化があれば、計画を中止・修正する必要があります。
そのため、最初から子どもや保護者へ、
「予定どおり必ず家庭復帰できるわけではなく、安全を確認しながら計画を調整する」
ことを伝えておくことが大切です。
したがって⑤は適切です。
「家庭復帰」と「措置解除」は同じ瞬間ではないことがある
家庭復帰支援では、いきなり施設から退所して完全に措置解除するのではなく、段階的に進めることがあります。
たとえば、
- 面会
- 外出
- 外泊
- 一定期間の家庭生活
- 措置停止
- 経過観察
- 安全確認
- 措置解除
というように、徐々に家庭生活を試しながら判断します。
事例によって手順は異なりますが、
家庭復帰=その日に直ちに完全な措置解除
とは限らない点が重要です。
措置停止とは
措置停止は、施設入所措置を直ちに解除せず、一時的に家庭で生活させながら経過を見る方法として用いられます。
この期間に、
- 子どもの生活が安定しているか
- 保護者が適切に養育できているか
- 虐待などが再発していないか
- 地域支援が機能しているか
を確認します。
問題があれば家庭復帰計画を見直し、必要な保護を再開できるようにします。
家庭復帰後の時期も重要
施設を退所して家庭へ戻った直後は、家族関係が再び大きく変化します。
施設入所中は安定していた親子でも、同居を再開すると、
- 親子の距離感
- 生活リズム
- しつけ
- 学校生活
- 家計
- 保護者のストレス
などが再び問題になることがあります。
そのため、家庭復帰後も、
- 家庭訪問
- 学校との連携
- 市町村との連携
- 要対協によるモニタリング
などを継続することが重要です。
現在の児童相談所運営指針でも、家庭復帰後の一定期間、安全を継続して確認することが重視されています。
児童相談所の「組織的判断」
家庭復帰の可否は、担当児童福祉司一人の判断で決めるものではありません。
児童相談所では、
- 児童福祉司
- 児童心理司
- 医師
- 管理職
- 必要な専門職
などから情報を集め、援助方針会議等で組織的に判断します。
特に虐待事例では、
「家庭へ帰せるか」ではなく、「帰した後に安全を維持できるか」
という視点が重要です。
子どもの最善の利益で考える
家庭復帰は、それ自体が絶対的なゴールではありません。
家庭で暮らすことが子どもの最善の利益にかなう場合に、家庭復帰を進めます。
場合によっては、
- 家庭復帰を延期する
- 計画を修正する
- 施設生活を継続する
- 里親委託等を検討する
こともあります。
「家族だから必ず一緒に暮らすべき」と固定的に考えず、子どもの安全と発達を中心に判断します。
第6回問3「児童相談所の社会診断」とつなげる
第6回午前問3では、児童相談所で子どもと家庭の社会診断を担当する職種として、児童福祉司が問われました。
社会診断では、
- 家庭環境
- 家族関係
- 学校
- 地域
- 社会資源
などの情報を整理します。
家庭復帰を判断する場面でも、こうした社会的情報が重要です。
つまり、
児童相談所のアセスメント → 援助方針 → 家庭環境調整 → 家庭復帰判断 → 地域での継続支援
という一連の流れで理解できます。
家庭裁判所と児童相談所を区別する
試験では機関の役割を分けて覚えます。
家庭裁判所
- 児童福祉法第28条に基づく施設入所等の承認
- 少年事件
- 家事事件
など、司法的判断を担います。
児童相談所
- 相談
- 調査
- 社会診断・心理診断等
- 一時保護
- 施設入所等の援助方針
- 家庭環境調整
- 家庭復帰・措置解除の判断
- 継続的な支援
などを担います。
本問では「家庭復帰直前の実務主体」が児童相談所であることを理解すると、③を除外できます。
試験での見分け方
家庭復帰の問題では、次の語が重要です。
○ 適切
- 子どもの意思確認
- 家庭訪問
- リスクアセスメント
- 要対協
- 関係機関連携
- 計画の修正
- 措置停止
- アフターケア
× 誤り
- 家庭復帰ごとに家庭裁判所へ措置解除を申請する
この区別で本問は解けます。
まとめ
第6回公認心理師試験・午前問44の正答は ③ 家庭裁判所に児童福祉施設入所措置解除を申請する です。
家庭復帰が近づいた場合、児童相談所は、
- 子どもの意思
- 家庭環境
- 保護者の状態
- 安全性
- 地域支援体制
を確認し、必要に応じて家庭復帰計画を修正しながら、組織的に措置解除を判断します。
試験では、
家庭復帰・措置解除の実務主体=児童相談所
家庭裁判所への解除申請ではない
と整理しておきましょう。
関連記事
参考資料
- 一般財団法人 公認心理師試験研修センター|第6回公認心理師試験 午前問題・正答
- こども家庭庁|児童相談所運営指針
- 厚生労働省|子ども虐待対応の手引き
- 児童福祉法
- 児童虐待の防止等に関する法律

コメント