【学部生・院生向け】研究のために必要な論文の読み方を解説
- 2021.01.14
- 心理学
- 若手心理職・大学院生
- 論文はどうやって探すの?
- 論文の読み方は?
- テーマの組み立て方は?
今回の記事は、こんな疑問に答える内容になっています。
臨床心理士の専門業務に「調査・研究」が含まれているように、心理職にとって研究は重要な仕事のひとつとなります。
とはいえ、大学の卒業論文ではじめて研究に携わる方が大多数で、修士課程に進めばさらに高いレベルの研究を担うことが要求されるため不安な方も多いのではないでしょうか。
働く場所にもよりますが、心理職は現場に出てから研究を行うことも多いです。
今回は一応研究も実施している臨床心理士・公認心理師のYamashunが、心理学に関連する研究をはじめる前段階である研究計画の立て方についてポイントを解説します!
研究論文の探し方
まずは最初の一歩。論文の探し方についてです。
研究論文の探し方には大きく2つあります。
- インターネット上で探す
- 大学附属の図書館で探す
インターネット上で探す
今の時代、日本語論文の多くはインターネット上で手に入れることが可能です。
サイトのロゴは各サイトへのリンクとなっています。
上のサイトで興味のあるキーワードを入力すれば論文が複数出てきます。
興味のあるキーワードがまだ曖昧な場合は、論文が投稿されているジャーナル(雑誌)自体を検索するのがいいでしょう。
- 心理学研究 日本心理学会
- 教育心理学研究 日本教育心理学会
- パーソナリティ研究 日本パーソナリティ心理学会 などなど
大学附属の図書館で探す
各大学によって差はありますが、論文が掲載される雑誌が図書館内にある場合も多いです。
図書館に出向いて館内を探してみるのもひとつの手ですが、先ほど紹介した日本語論文を探すサイトの中で、その雑誌が置いてある大学を検索することも可能です。
①CiNiiにアクセスして、上のタブにある「大学図書館の本をさがす」をクリックする
②「雑誌」を選択して、フリーワードに関心のある雑誌名を入力し「検索」を押す
所蔵されておらず、インターネット上でも論文が手に入らない場合は、大学の図書館で『文献複写申込み(論文の取り寄せ)』をすることが可能です。*有料
論文の読み方
興味ある論文を見つけることができたら、次に論文を読むことになるわけですが、こんな疑問をもったことはありませんか?
研究と聞くと、研究者の独創的な発想をもとに進められていくというイメージがありますよね。
確かに、独創的な発想で研究のアイデアを思いついて実行にうつすことができたら、それほど素晴らしいことはありません。
ただし、この独創的な発想を目指す場合、充分な知識を積み上げていないと、根拠が破綻してしまう可能性があります。
研究は根拠となる「知識」を積みたてて構成していくもので、どれほど独創的な内容の研究であっても、既存の「知識」を組み合わせて練られています。
そのため、まずは根拠となる「知識」を得るために、論文を読む必要があるということなのです。
次に研究のために論文を読むときのコツとあわせてテーマを決めるときのポイントも解説していきます。
その前に、研究のテーマを決める際の大前提だけ押さえておいてください。
研究から得られる有益性(この研究が何の役に立つか)をまず第一に考えること
有益性が担保できていれば、卒業研究は既存の研究論文+αでもいい
方法(Method)を読むこと
論文をはじめて読むときに、序論(Introduction)と考察(Discussion)のみに注目して、難解な方法(Method)と結果(Results)を詳しく読んでない、、なんてことはあるあるだと思います。
ただし、研究論文の質を決めるのは方法(Method)ということを忘れてはいけません。
どれだけ論理的に根拠が積み上げられている研究であっても、方法がおざなりでは、示された結果が「正しい知識」として使えるかどうかわからないからです。
また方法に注目して、
- この研究はデータのサンプルが偏っているから、サンプルを変えても同じことがいえるのか?
- この研究では、データの測定にこんな尺度を使用しているけど、こちらの尺度の方がより追求できるのでは?
- この解析方法よりも、より結果を反映しやすい解析方法があるのでは?
このような疑問を抱くだけでも、十分研究に結びつけることが可能です。
考察に注目して、「○○の研究の考察で□□が示唆されていたので」というテーマの作り方をする方も多いと思いますが、方法がしっかりしていない論文の考察をもとに自分の研究の仮説を組み立てると、どこかで根拠が破綻するなんてことにもなりかねません。
研究論文の質を決めるのは方法(Method)。
方法に注意を向けて論文を読むことで、テーマが決まることもある。
わかったことより、わからないことに注目すること
論文のテーマを作るときに大切なのは、「先行研究で、Aまではわかっているけれど、Bはわかっていないので、Bを明らかにする研究をします!」と、自分の研究の主旨を説明できるようになることです。
そのためには先行研究で示された「知識」と、示されていない部分を明確にとらえる必要があります。
この指導を受けることが多いと思いますが、「書いてあることが嘘だと思って読みなさい」という意味ではありません。
これは、「自分が論文を読んでいて、『ここがわからない』という点を明確にしなさい」という意味だと考えます。
この『わからない』には、以下の2つのパターンがあるでしょう。
「知識」が足りなくてわからない
「根拠」が足りなくてわからない
「知識」が足りない場合は、同じテーマで関連するような論文をたくさん読んでカバーしていく必要があります。
「根拠」が足りない場合は、そこが研究テーマになります。
ただし、「根拠」は既に他の研究で示されているかもしれません。そのため、できるだけ最新で権威あるジャーナルの論文を読むことも重要です。英語論文はグローバルで最先端な「知識」がある場合が多いため、「読みなさい」といわれるわけです。
まとめ
この記事では、学部や大学院ではじめて研究を行う方に向けて、初歩中の初歩である論文の検索方法、基本的な論文の読み方について解説しました。
最初に説明したように、「調査・研究」は心理職(特に臨床心理士)にとって重要な業務のひとつといえます。
臨床現場に出てからも勤務する機関によっては研究を行うところもあるでしょうし、臨床で困ったときに論文を検索することもあるでしょう。
また、研究論文を書くときに必要な「根拠となる知識」を積んでいく力は、臨床場面での見立ての力や介入のスキルにも関わってきます。
今回まとめた内容は基礎中の基礎ですが、「自分はカウンセリング含めた臨床を学びたいんだ」と言わずに、是非身につけていきましょう。
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